出版社内容情報
『年代記』はローマ帝国初代の皇帝アウグストゥスの死(紀元一四年)から筆をおこし,以下ティベリウス帝からネロ帝の死(六八年)に至る四代五十五年の治世を物語る.人間の本性に肉迫してやまぬ洞察力,類まれな描写力.――この史書をひもとく者は,あたかも一篇の秀抜な歴史小説に接するかのごとき感を深くする.
内容説明
『年代記』はローマ帝国初代の皇帝アウグストゥスの死(紀元14年)から筆をおこし、以下ティベリウス帝からネロ帝の死(68年)に至る4代55年の治世を物語る。人間の本性に肉迫してやまぬ洞察力、類まれな描写力。―この史書をひもとく者は、あたかも一篇の秀抜な歴史小説に接するかのごとき感を深くする。
目次
第1部 ティベリウス(紀元一四年;紀元一五年;紀元一六年;紀元一七年;紀元一八‐一九年;紀元二〇年;紀元二〇‐二一年;紀元二一‐二二年;紀元二三年;紀元二三‐二五年 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よしひろ
9
タキトゥスの卓越した描写力。ローマ皇帝ティベリウスからネロまで。2016/03/30
壱萬弐仟縁
8
『ゲルマニア』は暗記したのだが、本書を図書館で見つけたので借りた。兵隊の中にも、疲れと苦労に対して休息を求める老兵がいたようだ(49頁)。兵士も人間だ。「昔、質素が幅をきかしていた理由は(略)自己を制御していたから(略)外国を征服して他国民のものを、市民戦争に勝って自分らのものを、浪費することを学び取った」(217頁)。質素と浪費の時代の波もあるが、結局、人間が制御できないとベクトルは転換してしまう。「国家の不幸は、往々にして、個人が点をかせぐ機会に利用される」(318頁)。個人は国家の犠牲になることも。2013/05/07
氷菓子
5
副題にティベリウス帝からネロ帝へとあるが、原典欠損によりこの上巻でタキトゥス自筆によるのはティベリウスのみ。ティベリウスはアウグストゥスの下で働いてた頃は生活も世間の評判も完璧だったが、彼自身の本能にのみ従うようになってからは悪行と破廉恥の中にどっぷりと身を沈めた、とかなり辛辣な評価。重用していた側近と息子の妻の共謀で息子が殺されたのだから、他人を信用できなくなるのも致し方ないと個人的には思う。むしろ不幸な形で多くの親族を亡くした中で、よく帝国を統治したと賞賛したいくらい。2023/06/14
TMHR ODR
5
★×3。ティベリウスからネロまでの歴史、前半。ただし欠落が多くほぼ一冊ティベリウスについて。なんでタキトゥスはこんなにティベリウスを嫌いながらも書いてるのか?と思いながら読むと、後半の深謀遠慮による家族や政敵への追い込みの数々で納得。コレは塩野七生本では強調されてなかった部分。セイヤヌスの娘の殺され方が残酷。2016/09/27
ハルバル
5
優秀な軍人としてゲルマニア平定を果たしたが、即位後は民衆人気の無さとセイヤヌスの重用で親族を死に至らしめた恐怖政治の為とかく評判の悪いティベリウス時代を記す。彼は良く言えば深謀遠慮の人、悪く言えば陰険という印象。晩年は最も信頼した側近セイヤヌスを断罪したのをきっかけに自制が効かなくなっている感じだ。ただ皇帝としての評価は別としても人間的には興味深い人物だと思う。タキトゥスは結果から見て何事にも悪意の解釈をしがちなのが注意点だが、元老院腐敗を示す数々の告発と陰謀は陰鬱な時代の雰囲気をよく伝えている。2015/09/08