出版社内容情報
数多い大乗仏典中「法華経」は特にその強い個性と庶民的性格によって,我が国仏教の歴史に大きな影響を及ぼし信仰の柱としてあがめられ,唱えられて来た.また,経中の美しい譬喩,巧みな説話の数々は文学・芸術の世界にも豊かなものをもたらした.本書では,漢訳・読み下しに原典の現代語訳を対置,味読の便を計っている.
内容説明
『法華経』は信仰の対象として強く深くあがめられ唱えられてきたが、同時に美しい譬喩や巧みな説話の数々が文学・芸術の世界にも豊かなものをもたらした。本書では漢訳・読み下しにサンスクリット原典の訳を対向させて、これら様々な要望にこたえる。
目次
妙法蓮華経(序品第一;方便品第二;譬喩品第三;信解品第四;薬草喩品第五;授記品第六)
正しい教えの白蓮(いわれ;巧妙な手段;たとえ;意向;薬草;予言)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔
8
100分de名著で取り上げられた頃に購入したんだけど今まで読めてなかったので重い腰を上げて。経典とかを難しく考えがちだけど結局のところ論語のように問答していることを書いているだけなので、そこを理解するとある程度は拒否反応がなくなるんじゃなかろうか。途中鳩摩羅什の訳がない部分があるので日本語訳のみになる。漢訳、読み下し、日本語訳と見開きで用意されているが、さすがに漢訳は読んでもわからんというか読み方もわからんので読み下しと日本語訳だけ読み進めた。2022/07/16
quickening
8
個人的な研究対象として法華経を挙げている。法華経は現代の、世尊の教えが行き届かない「末法」に通じる教えとして哲学や宗教にはもちろんのこと、文学や芸術にも多大な影響を与えている。印象的なのは、釈尊の教えを、比喩を多様に用いて表していることである。薬草喩品では世尊の教えを大自然の摂理にたとえ、見事なまでに壮大に表されている。くどいまでに何度も世尊が教えを与え、何度も教えを乞うている舎利弗たちの姿勢は、仏教としての求道心を感じさせる。極めて理性を重視しているのも良い。宗教は決して理性の反対ではないことがわかる。2021/07/10
マープル
8
和訳部分のみ読了。この本はすでに『仏教、本当の教え - インド、中国、日本の理解と誤解』(植木 雅俊、中公新書)で辛辣に批判されているのだが(問題ある箇所が500以上とか)、細かいサンスクリットの文法学的解明は置いといて、とりあえず概要を知りたかったので手に取った(ま、その前にずっと前から積読だったんですけどね・・・)。同じ岩波文庫でも、中村元訳の初期仏典シリーズとは大きく趣が異なる。これが大乗仏教的ということなのだろうか? これはまた大乗仏教についての概説書が必要になりそうだ。2016/08/26
aki
6
序品から、もうおもしろいよね。釈尊が起こした神変を見た弥勒が文殊師利に「なんの瑞相でっか?」と質問する。文殊師利は昔むかしの日月灯明如来の話を始める。日月灯明の一番弟子だった妙光菩薩は仏の右腕として懸命に頑張っていた。だれしも後継者は妙光だと思っていた。仏の涅槃が近づいたので、大集会が開かれ、次の仏を指名することになった。かたずを飲む聴衆。意外なことに指名されたのは、だれも知らないような徳蔵菩薩だった。「だれやねん」。たとえれば、一部上場の大企業の社長が後継者として末席の取締役を指名したようなものか。2016/02/11
aki
5
もう何度読んだことだろうか。何度読んでも新しい発見がある。法華経のすごさは一人ひとりの読者に対する特別なメッセージとなっていることだ(『新約聖書』もそうだが)。1億人の読者がいるとして、だれしもにあてはまるような普遍的なことがらが書かれているのではなく、1億通りの個別のことがらが書かれている。自分の過去・現在・未来が、そこにあるのだ。いまの自分に関係が深いのは信解品、五百弟子受記品、授学無学人記品か。特に信解品の長者窮子の喩えは身につまされる。父(仏)から離れて、もう50年も60年も経ってしまった。2014/02/08