出版社内容情報
近代日本の代表的思想家の一人で,その無惨な最期がいまも生々しい無政府主義者大杉栄の天衣無縫な自伝.「思想に自由あれ.しかもまた行為にも自由あれ.そしてさらにまた動機にも自由あれ.」このような奔放な精神で駆けぬけた波瀾の半生が生き生きと語られる.『日本脱出記』を併収.日本アナキズム研究に不可欠の一冊である.
内容説明
近代日本の代表的思想家の1人で、その無惨な最期がいまもなお生々しい無政府主義者大杉栄の、天衣無縫、人間味溢れる自伝。「思想に自由あれ。しかもまた行為にも自由あれ。そしてさらにまた動機にも自由あれ。」このような奔放な精神で駆けぬけた波瀾の半生を語る。「日本脱出記」を併収。日本アナキズム研究に不可欠の一冊である。
目次
自叙伝(最初の思い出;少年時代;不良少年;幼年学校時代;新生活;母の思い出;獄中生活;葉山事件)
日本脱出記(日本脱出記;パリの便所;牢屋の歌;入獄から追放まで;外遊雑話)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
41
不良少年は鶴見俊輔氏をも思い出した。母の憶い出も、病院で亡くなったことが共通している。そして、鶴見氏も母も、7年前に他界された。改めて、合掌。りんを鳴らす朝・晩。2022/02/05
壱萬弐仟縁
14
喧嘩っ早い性格。殺伐で残忍なのは、無実の犬や猫を殴殺(31頁)。ひぇー。日清戦争とかそうした時代背景がそういう行動をとらしめたのかも。学校の成績は英語がいいぐらいで、あとは乙(79頁)。内気な、恥ずかしがりのところもある(109頁)と述懐するので、わたしに似たようなところがある。今の子供は読書などしはしないが、当時は学校で渡す教科書、参考書以外は読書厳禁とのこと(114頁)。当時の子供の身になってみろ。罰があたるぞ。自由に借りれるくせに。そんな思いを強くする。パリのトイレでは閉口する場面も(312頁~)。2014/01/17
澤水月
9
嵐山光三郎が昔「別れのセックスを惜しまねば刺されなかったのに」と書いていたが同感(笑)。だが刺すと分かってる女の側で一晩過ごす迫真の描写が凄すぎ。後に刺した神近の生霊に悩む話まで告白、実話怪談もぎっしり、癇が強く猫を虐殺、軍人の子で陸軍幼年学校で「御真影近くで立小便まかりならぬ」と叫び洗礼受け美少年男色で放校…ぼんやりしか知らなかったので生々しい人間像に驚く。単に「無政府主義者」ではなく徹底した個人主義者。「金をどこから貰おうが使い道に口を挟まれたくない」態度が一貫している(それが女との刃傷沙汰まで生む…2011/06/16
otmsy
5
大杉栄と言うと、名前の割には詳しい業績が知られていない人物の一人だと思う。今回、初めて自叙伝を読んだのだが、まずは大正時代に書かれたとは思えないようなポップな文体に驚いた。内容も盛り沢山。特に政府からマークされている身でありながら、後藤新平のもとに金を借りに行ったときの会話が痛快(これは貸す側もすごいと思うけど)。次は、このような怪人が生まれ、悲惨な最期を迎えざるを得なかった当時の土壌にも着目したい。2011/06/19
yuma
4
栄の奔放さが全編に満ちています。世界が広かった頃の旅を想像したり、読み物としても楽しめました。しかしそれ以上に、幸徳秋水や小林多喜二然り、自らの思想を盾に命懸けで権力に抗した日本人が、つい100年前までいたという事実に衝撃をうけました。(けれど、矢張り命を大切にしたいです。)当人が書いたものを時代を超えて読める読書という行為のすごさを、本書で初めて知った気がします。2016/03/16