出版社内容情報
内村鑑三(一八六一―一九三〇)は,「代表的日本人」として西郷隆盛・上杉鷹山・二宮尊徳・中江藤樹・日蓮の五人をあげ,その生涯を叙述する.日清戦争の始まった一八九四年に書かれた本書は岡倉天心『茶の本』,新渡戸稲造『武士道』と共に,日本人が英語で日本の文化・思想を西欧社会に紹介した代表的な著作である.読みやすい新訳.
内容説明
新渡戸稲造『武士道』、岡倉天心『茶の本』と並ぶ、日本人が英語で日本の文化・思想を西欧社会に紹介した代表的な著作。内村鑑三(1861‐1930)が、奔流のように押し寄せる西欧文化の中で、どのような日本人として生きるべきかを模索した書。新たな訳による新版。
目次
1 西郷隆盛―新日本の創設者(一八六八年の日本の維新;誕生、教育、啓示 ほか)
2 上杉鷹山―封建領主(封建制;人と事業 ほか)
3 二宮尊徳―農民聖者(今世紀初頭の日本農業;少年時代 ほか)
4 中江藤樹―村の先生(昔の日本の教育;少年時代と自覚 ほか)
5 日蓮上人―仏僧(日本の仏教;生誕と出家 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
102
内村鑑三が思う代表的日本人を紹介しています。何故この5人が選ばれたのか正直わかりませんでした。ただ、読み終えて思ったのは、自らの信念を貫き、その実現に力を注いだということです。キリスト教徒でありつつ、日本という国を愛していたからこそ、自らが思う日本人を代表的日本人として海外に紹介したのかもしれません。2017/07/10
molysk
85
キリスト教の信仰心とは異なるが、まったく劣らぬ道徳心をもった日本人がいた。西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮。宗教とは何かを学んだのは宣教師からではなく、敬虔にして尊敬すべき何人もの日本人が、私を形作ったのである。内村はこう述懐する。岡倉天心の「茶の本」、新渡戸稲造の「武士道」と同時期に、日本の精神を世界に広く伝えんとして本書は執筆された。日清戦争の機運高まる時期でもあり、これを義戦と信じた内村が日本の正義を訴える目的もあった。後に絶対非戦論に転じた内村は、改版で人物伝以外の主張を削除する。2023/08/20
Gotoran
74
内村鑑三が、明治時代・日清戦争勃発時に英語で日本の文化・思想(日本人に脈々と流れている精神の強さ、素晴らしさ)を欧米社会に紹介した代表作(『武士道』、『茶の本』と並び称される。)取り上げられたのは、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の5人。基督教の内村が、自らを育んだ日本の風土を見直して天の声にしたがって、夫々の人物の思想・信条に焦点を当てて簡潔に纏められている、分かりやすい。大赤字の藩を再建した上杉鷹山と荒廃地を復活させた二宮尊徳は徳をもって事に当たるという共通点があることが分かる。2021/07/08
夜長月🌙
63
内村鑑三が英語で出版したものの逆翻訳です。海外で各国版が出ています。代表的日本人として「西郷隆盛」「上杉鷹山」「二宮尊徳」「中江藤樹」「日蓮上人」を選んでますが特に私が注目したのは「鷹山」と「尊徳」。鷹山公は米沢藩の藩主として行政改革を行いました。「民の幸福は治者の幸福である」といった今でいう顧客重視の考え、win-winの理念はお飾りの殿様が多かった中、傑出したものでしょう。尊徳は道徳を基とした経済改革を為し得てます。世界的ロングセラー、ジェームス・アレンの「原因と結果の法則」にも似ています。2017/12/23
かわうそ
60
Amazonのレビューでは『単なる伝記Wikipediaで十分』などと書かれていましたが言葉を情報伝達の手段としか捉えないのだとしたらそうなのでしょうね。(貶している訳では無いです。)『単なる伝記』が人の心をここまで動かせるのは内村鑑三の言葉選びが絶妙だからで、言葉というのは情報伝達以上に人の心を動かすという最大の長所があります。また、言葉はその人自身がどれ程意味を見出すことが出来るかという個人の感受性や力量にも関わってくる部分が出てくるのも読書の面白みのように思います。2023/03/22