出版社内容情報
天和から元禄にかけて農書というものがいくつか現われはじめたが,中でも宮崎安貞(1623‐1697)の本書は地方的性格を脱した本格的農書として群を抜く.諸国での見聞を実地にこころみること40年,中国の農政全書を手本に農民の技術向上をねがってまとめあげられた.自給生産から商品生産へと転換する時代の要請にも合致し,ひろく世に迎えられた.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
8
「農業の術は人を養ふの本也」(21頁)。巻頭の農事圖は日本人のアイデンティティを直感できる描写(35頁~)。糞(こゑ)は当時の重要な肥料であり、今のように原発や下水道もないが、循環型社会でみな農民なら今ほどの目に余る格差はなかったのではないか? 糞は四種類あり、苗糞、草糞、灰糞、泥糞(69頁)。自然由来の素材で、ダイオキシンはなかったのではないか? 作物のスケッチが散りばめられている。江戸時代での月刊現代農業のような感じがした。ひたすら作物学という感じ。漆が254頁~。果樹もある。293頁は檜。家畜も。2013/12/11
里のフクロウ
3
1697年の農業書。古文に挑戦。全11巻で構成、第1巻は農事総論、第2巻以降は穀類・野菜と続き樹木に至り、その栽培法が記述されている。興味を引いたのは総論。耕作・種子・土地・時節・除草・肥料・水利・収穫・貯蔵・山林と農作業全部門の手ほどきを纏めてある。心構えと実践留意である。耕作の冒頭「稲を生ずるは天なり、之を養うは地なり。人は中にいて・・」と「生養の道」を唄う。農業に立ち向かう精神を見ることができた。自然の則に従い、耕地に陽を織り込む術を展開している。現代の力ずく農法からくる病理の在処を知れる良書。2020/02/19
シンドバッド
1
農業に従事したいる人達向けに宮崎安貞が著しただけに、大変、読みやすい。2013/04/19