出版社内容情報
ザミャーチン(一八八四―一九三七)の代表作で,一九二○年代初期の作.ロシアの政治体制がこのまま進行し,西欧のテクノロジーがこれに加わったらどうなるかという未来図絵を描いてみせた,アンチ・ユートピア小説である.最も悪質な反ソ宣伝の書とされ,長く文学史から抹殺されてきたが,一九八八年に初めて本国でも公刊された.
内容説明
20世紀ソヴィエト文学の「異端者」ザミャーチンの代表作。ロシアの政治体制がこのまま進行し、西欧の科学技術がこれに加わったらどうなるか、という未来図絵を描いてみせたアンチ・ユートピア小説。1920年代初期の作だが、最も悪質な反ソ宣伝の書として長く文学史から抹殺され、ペレストロイカ後に初めて本国でも公刊された。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
328
旧ソ連時代に書かれた反体制ディストピア小説。ここで描かれるのは、人民が徹底的な管理下に置かれる社会だ。もっともプライヴェートなはずの性行為でさえもが政府の統制の下でスケジュール管理されるのである。さすがに、この時ばかりはブラインドを下すことが許されるが、それ以外はすべてが文字通りのガラス張り生活である。人々はそうした生活に疑問も持たず、喜びさえ感じていた。ここに描かれるのは、オーウェルの『1984年』やハクスリーの『すばらしい新世界』よりも、一層に暗鬱で救いのない未来像(ザミャーチンにとっては現在?)だ。2016/07/01
ケイ
134
書かれた1920年代というのを想像しながら読んだ。共産主義的な恐ろしさを、その一歩先の黒いユーモアをまじえて、シニカルに描いている。決してシリアスとは違うのだが、息詰まる苦しさが手に取るように伝わってくる。特に、あの女性のあたり…。彼女の強さと悲劇が最も印象に残る。解説も、素晴らしかった。解説に紹介された作家の本や、共産主義革命の歴史をもっと勉強してから再読したいと思う。2017/06/14
harass
73
はるか昔の再読本。今回は読解力が上がっているせいかいろいろ楽しめた。『単一国』の誇る宇宙船〈インテグラル〉の作製担当者である主人公は、覚え書を書くようになった。理性と秩序を愛する主人公に接触してくる謎の女性…… 1920年に発表されたディストピア小説。発禁になり著者は亡命を余儀なくされた。当時のロシア・アバンギャルドのレトリックのパロディが駆使してあり独特の比喩や表現に面食らうがなれると面白い。グロテスクな安部公房のような印象。すっかり体制側の主人公が心を乱していくさまは実に面白い。2016/06/27
syaori
68
ディストピア小説。人々が、同じ時間に起床し食べ仕事をし眠る、「百万が一つになって」生きる社会で、恋をしたことから個としての意識「魂」を持ってしまった主人公の葛藤を追って物語が進みます。作者はソ連の作家で、本作の世界も「『私』ではなく『われわれ』を主語として考える」「個人的な利害関係はすべて後回し」という初代教育大臣ルナチャルスキーの言葉が示すソ連的ユートピアへの風刺としても読めますが、本書の価値は、それを越えて、主人公の葛藤が社会の成員である自分と個の間で揺れ動く近代人の葛藤でもあるからなのだと思います。2022/06/21
HANA
68
言わずと知れたディストピア小説の傑作。全体主義に覆われた国家で働く主人公が、ある時ファム=ファタルと出会った事をきっかけに日々に疑問を抱く。という構成自体は他のディストピアと共通しているようだが、この小説で素晴らしいのはやはり単一国の様子。全てが無機質で、全てが計算に換算されるような凍ったような世界が見事に描き出されている。ピンク・クーポンや恩人の存在も管理されているという様子がひしひしと伝わって息苦しい。一番凄いのがこの小説、スターリン政権下のソ連で発表されたという事実。作家も身の危険を感じるはずだわ。2017/10/27