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岩波文庫
六号病棟・退屈な話(他5篇)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 391p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003262269
  • NDC分類 983
  • Cコード C0197

出版社内容情報

短編小説の世界的名手チェーホフの代表作二編を収める.世間的な名声を博しながら自分では人生の意味を発見できずに苦しむ『退屈な話』の教授.懐疑におちこんで狂人と普通人との区別がつかなくなる『六号病室』の医師など,いずれも救いなきインテリの苦悩を描くもので,いわば作者による病めるロシアの臨床的診断書であろう.

内容説明

世間的名声を得た老教授。だが、その胸の内は…。空しさと無力感―わびしい気分で綴られた手記の形をとる「退屈な話」。正気と狂気、その境界のあいまいさを突きつけて恐ろしい「六号病棟」。他に、「脱走者」「チフス」「アニュータ」「敵」「黒衣の僧」を収録。医者としてのチェーホフをテーマに編んだアンソロジー。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みっぴー

52
医者であり作家でもあった世界屈指の短篇の名手、チェーホフ。医者としての視点を生かした短篇集です。医者と患者、医者と医者、医者と家族…シチュエーションは様々ですが、言いたいことは、多分これ。「医者だって人間なんだよ!!」家族もいれば生活もある。もちろん感情だって。それなのに患者というやつは…医者と患者が逆転してしまう『六号病棟』がやっぱり面白かったです。カフカ的な不条理劇って、ユーモラスだけど底知れぬ恐怖を感じます。2017/02/12

AICHAN

42
図書館本。チェーホフの短・中編集。チェーホフはロシアの小説家、劇作家で、モスクワ大学医学部に学び医師となる。学生時代からユーモア短篇を大量に書いて一家を養い、やがて本格的な作家として高い評価を受けるようになった。90年には結核の身をおしてサハリン島におもむき、住民調査を行った。医師としてのそうした経験から書かれた短・中編が多く収録されている。劇作家でもあったチェーホフの真骨頂はセリフにあると思った。読んでいて、役者たちの叫びや嘆きや思索が聞こえてくるようで、まるで芝居を観ているようだった。2021/12/26

彩菜

22
優雅な鹿の群れが私の前を走り抜ける。それはある憐れな男が閉じ込められた鉄格子の中で最後に見たものだ。その男は何もしなかったのだった。卑劣には憤激で、醜悪には嫌悪で応えなければならなかったのに、自分一人では足りないし、つまるところ人は皆死ぬのだからと、指一本、声一つ上げなかったのだった。当の卑劣と醜悪の中に閉じ込められるまで、何も知ろうとも分かろうともせず、そしてその事実に打ちのめされて死んだのだった。男は何と愚かだろうか。人は何と愚かだろうか。なのに何故この鹿の群れはこんなに美しいのだろうか。苦しい程に。2020/12/29

musis

22
チェーホフ短編集。苦しい状況が自分にないときは、理想を語り当事者に諭してみたりする。だが実際に自分のこととなった時に現実が見えてくる。理想のようには出来ない、いかない。「融通のきかない、粗暴な良識」もやはり立ちふさがってくる。でもそれは別な立場から見たら、当然でしっかりした行為なのだろう。内側と外側を感じた。解説の、あくまで患者の立場にたち苦しみを取り除くのが医師の務めだとチェーホフは考えている、になるほどと思った。2014/11/10

ぞしま

21
チェーホフの医者なアンソロジー。全編良かったが「敵」と「六号病棟」は異なった趣でありながら、ひときわ輝いていたように思う。「六号病棟」の始まり方、戦慄が走るほどすごい。泰淳の『富士』みたいと少し思ったが違うた。こっからどんな話が始まるんだ、どこに連れて行かれるんだ、と。読み終わってみたら至極暗くなったけど。肌が泡立ちしみじみこわくなる。この恐怖は地続き。 「敵」はカフカの「田舎医者」みたいな始まりだなと思ったりしたが、違った。含蓄に溢れ、人生の色々な場面でチェーホフの「敵」みたいだなと思ったりしそう。 2020/08/15

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