岩波文庫
可愛い女/犬を連れた奥さん - 他一篇 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 139,/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003262238
  • NDC分類 983
  • Cコード C0197

出版社内容情報

ここに収められた三篇には,晩年の沈潜期に移ろうとするチェーホフ(一八六〇―一九〇四)の精神的・肉体的な変化が微妙に影を落としている.淡々と描かれた苦く哀しい人間の姿,しかし,その哀しみの底にもなお,ほのぼのと感じられる生のよろこびを故神西清氏の名訳は鮮やかに伝えてあますところがない.『ヨーヌイチ』を併収.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

153
どの作品だったかは忘れたのだが、チェーホフは村上春樹も小説かエッセイの中で触れていたし、先ごろ読んだ金井美恵子の『道化師の恋』にも顔を出していた。トルストイもまた熱心な読者だったそうだ。ことほどさようにチェーホフというのは玄人好みの作家なのだろうか。この短篇集は表題作2篇のほかに「イオーヌィチ」を収録する。いずれも典型的なロシア・リアリズム小説だ。それぞれの物語は短いにも関わらず、なんだかずっしりとした読み応えがあり、いくつもの人生を生きたような気分になる。篇中では、やはり「犬を連れた奥さん」がベストか。2013/11/02

のっち♬

152
1898〜99年の3篇。不倫物語『犬を連れた奥さん』は男の心理に厳かな風景描写を絡めて未知の感情を表出させる手腕が見事。嘘の真実性に風格すら漂う。『イオーヌィチ』は小市民生活の断片を参照で裏付ける簡潔さの中に繊細な洞察が光る著者ならではの芸当。『可愛い女』は夫に忠実な自身の母を重ねたような造形。寛大と無私の根幹にある思想欠落と依存は深刻で、子供ならではの応酬が象徴的な締めとなる。どれも暗鬱の先に淡い希望をそこはかとなく感じられ、女性の社会的地位の抗議が神西の日本語の乱れへの反感と美しく静かにシンクロする。2023/07/01

おしゃべりメガネ

143
【第61回海外作品読書会】う~ん、やっぱりこの手の文学作品は自分にはまだまだ荷が重いのかもしれません・・・。そもそも手にしたキッカケは江國さんの作品を読んだあとがきに登場したので、気になり読み始めましたが、正直何が何だかサッパリでした・・・。訳者さん、出版社さんには本当に大変申し訳ないのですが、自分にとってはお世辞にも読みやすい文章ではありませんでした。もうとにかく、文章を読み、訳されているのにも関わらず言い回しに「???」となり、同じ文を何回も読み直す‘作業’に作品自体を味わうことは自分には無理でした。2016/04/22

新地学@児童書病発動中

127
繰り返し読んでいるチェーホフの3つの短編。粗筋を要約すると、パッとしない話のように思えるのだが、読むたびに味わいが増す。「犬の連れた奥さん」はにっちもさっちもいかなくなった不倫の話で、「イオーヌィチ」は俗物の医者の話、「可愛い女」は結婚した男の色に染められてしまう女性を描いている。プロットではなく、人物の描き方、繊細な自然描写で読ませる作品だ。普通の人間の人生の重みやほろ苦さを、これほど感じさせてくれる小説は他にない。チェーホフを読むと人生はしんどいものだと感じながら、それでも生きていこうという気になる。2015/03/29

ケイ

117
「可愛い女」誰からも愛され可愛がられる女にとって、自分とはなんなのか。常に愛し尽くす女ほど、やっかいなものはない。「犬をつれた奥さん」心和むようなタイトルとは違う。美しい若妻に本気で思い入れた中年も終わりかけの男。浮気男が本気で落ちた恋。彼らが気づけない事は、当事者以外には明白なのに…。この短さで、これだけの物を書き上げられるチェーホフの文章力と人間観察眼に舌を巻く。彼自身は非常に真面目で徳のある人だったからこそこうした作品を書けたのではないだろうか。2015/12/05

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