出版社内容情報
十六歳の少年が初めて恋した年上の女性ジナイーダにはすでに恋人があった.その相手がほかならぬ自分の父親であることを知った時の少年の驚き…….人生の曙の恋を歌いリリシズムに貫かれたこの自伝的物語は,哀愁の詩人としての作者の真髄をよく伝え,またジナイーダは,彼の全作品中最もユニークな女性像といわれている.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
metoo
70
【洋子さんの本棚】より。16歳の少年の目覚め、喜び、苦悩、そして現実を知った少年の心の動きが、細やかに美しく切なく詩的に綴られる。16歳の少年より5歳年上の初恋の相手は、少年の頰をそよ風のように撫でただけで、沢山の取り巻きから相手を選ぶのではなく、なんと、少年の父親に恋をしていた。父親と同じ位の歳になった少年の初恋の回想は、この上もなく美しく人生の中で最も美しい儚さとして語られる。初恋の頃に「初恋」を読んでもこの醍醐味は理解出来なかった。【洋子さんの本棚】ありがとう。2017/04/27
lily
44
ツンデレでジェラシーの引っ掛け上手な彼女と四方八方の恋の衝撃波を素直に受け止めるセンチな僕。読者が最も心くすぐる構図なのよね。天衣無縫の言語アートにそりゃトルストイもドストエフスキーもこの射手には負けたと涙してもおかしくないわね。2019/07/03
にゃおんある
39
星が流れてしまったのだと、時々そう思うのです。借り物の器に借り物の魂。らしさ、というものが中々見失ったまま、光塵に霞んでよく見えないのです。ツルゲーネフを読んでいると、右の言葉に行き当たりました。取れるだけ自分の手で掴め、他人に操られるな、妙趣を味わい尽くせ、自分が自分みずからののためにあること、自分の意志を持つことが、本当の自由を与えるのだ、と言うのです。夢にしろ現にしろ、意識があるうちに、やり終えるものが待っているのだとしたら、きっと後悔してしまわぬうちに探し出さねばと思うのです。2018/02/15
コロンブスの卵から孵った雛
19
主人公の心情の移り変わりが繊細であり、詩的で美しい。相手方の少女の小悪魔っぷりも小気味よく、魅了される。初恋の破れ方が一風変わっている。しかし、描写の正確さのせいか甘美な初恋であることに相違ないため、特異性が消失してしまう。2023/10/06
まさげ
16
「初恋ははかないもの」そのような言葉はないものの、初恋がはかない事、大切な人と一緒にいられる時間は限られていることを実感しました。2019/02/19