出版社内容情報
薔薇色のレースに彩られた寝室の中,女はベッドに横たわり,姿見に映る美しい青年の姿をみつめている――.五十歳を迎えようとする元高級娼婦と,シェリ(いとしい人)と呼ばれる親子ほども年の違う若者との息詰まるような恋.ジッドが「一か所として軟弱なところ,冗漫な文章,陳腐な表現もない」と賛嘆したコレットの最高傑作.
内容説明
薔薇色のレースに彩られた寝室の中、女はベッドに横たわり、姿見に映る美しい青年の姿をみつめている―。五十歳を迎えようとする元高級娼婦と、シェリ(いとしい人)と呼ばれる親子ほども年の違う若者との息詰まるような恋。ジッドが「一か所として軟弱なところ、冗漫な文章、陳腐な表現もない」と賛嘆したコレットの最高傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
443
恋愛には、実に様々な形がありうるのだが、シェリの恋人は24歳年上のレア。これはどう見ても、私には疑似母子相姦としか思えない。シェリの潜在的なエディプスコンプレックス(ただし、父親は初めから不在だが)の許される形での投影ではないかと。正直に言うと、自分の身に引き付ければリアリティが持てないからである。もっとも、男の側が24歳年上なら首肯するではないかと言われればそうだと言わざるを得ないのだが。自分自身の愛の許容度を試されているような小説だった。そして、私は自分でも意外なことに偏狭であったようだ。2018/12/24
新地学@児童書病発動中
131
親子ほども歳が違う男女の恋を描く小説。これほど切なく、心を揺さぶる恋愛小説は少ない。最後の場面を読む時は涙が止まらなかった。真の恋愛は理屈を超えたものだと思う。理性とか見栄とか世間体を超えて、相手の傍にいたい、相手を抱き締めたいという純粋な情熱を、この小説は美しく表現している。元高級娼婦で、決して褒められるような生き方をしてこなかったヒロインのレアが、別れの時に年下の恋人シェリに示す優しさに胸が締めつけられる思いだった。仏文学最高の散文の書き手と言われるコレットの色彩豊かで繊細な文章にも酔えた。2015/08/02
buchipanda3
120
ベル・エポック(良き時代)の頃のパリを舞台とした恋愛小説。主人公であるレアは元高級娼婦で50歳を前にして美しさを誇り、親子ほど年の離れた男シェリを囲っていた。しかし彼は他の若い女性と結婚することに。物語の設定はありがちだが、レアの気高い生き方や信条を見せる姿が小意気に感じられ、彼女の発する言葉ひとつひとつを追い求めながら結末までを息を詰めて見守った。最後のやり取りが特に残る。引き返せない赤裸々な現実を前にして見せた女の美の凋落と彼女の青い目の衰えない美しさ。その饒舌ぶりは高尚じゃなかろうが悪くない。2021/08/10
takaichiro
112
破天荒を自で生きたコレットの代表作。シェリはイケメンの24歳。若い頃超美形だったトップランクの娼婦レアとの大人の恋を紡ぐ。レアはシェリの若さに翻弄されるが女性としての尊厳、甘やかして何でも許す立場を取らず、めちゃくちゃかっこいい。ただシェリがどこからか逃げ出してきたかの様にレアから離れていく最後のシーンは切ない。幾多の出会いと別れを経験したコレットならでは。余韻が残りとても良い。外国文学には大人の女性の凜とした恋愛話がある。日本はとかく恋愛=若者、大人だと不倫?の構図があるが、海外作品を見習って欲しい。2019/12/31
夜間飛行
88
愛を失いたくない49才のレアは、なぜ若い恋人シェリを結婚させようとするのか。二人が過ごす《豪奢な明るい部屋》は、彼女の心が恋人への愛と自意識の間で揺れているのではないかと思わせる。肉欲で結ばれた男女の支配被支配の闘争の後、シェリの睫毛の間にキラキラ光る二粒の涙を見つけたレアの母性が相手を包みこむ。結婚しても満たされないシェリはレアを思い続け、レアは繰り返しシェリの小さな仕草を思い出す。二人の終わらない愛が哀しい。恋人でありながら、母親めいているレア。鼓動が聞こえてきそうなほど近くににレアの心が感じられた。2015/10/30