岩波文庫
贋金つくり 〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 241p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003255872
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

出版社内容情報

ジイド(一八六九‐一九五一)が贋金使用事件と少年のピストル自殺という二つの新聞記事に着想を得て,実験的手法で描いた作品.私生児の生れに劣等感を抱く青年や作家の分身とも思われる作家,少年を使って贋金を流す男,級友のいじめにより強いられて自殺する少年など,無数の人物が登場して錯綜した事件の網目模様を繰り広げる.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

107
思春期は残酷だ。傷つかずに通り過ぎることはできない。その中で決定的に立ち上がれないまでに衝撃を受ける者が時にいる。その禊を無事に終えられたものは、自立に向かっていく。または再び親の温かい愛情に素直に帰っていく。生贄となったボリスは、その死によって皆に力を与えた。ベルナールは、ローラとそのお腹の子と触れ合うことで自分と父のつながりを見出す。ボリスやヴァンサンを地獄に追いやった者は、エドゥワール。彼は知らずに周りを巻き込む。ほら、もう次の獲物を見て舌なめずりをしているようだ。若者は悪い大人に気をつけるように。2016/04/14

NAO

50
人気はあるけれども実は虚飾に満ちた卑俗な小説家でしかないパッサヴァンが少年たちにとって悪への先導者でしかないというところで、「文学論」と「世の中に溢れる偽物」という二つのテーマは一つになっていく。「贋金」という寓喩は、暗澹としたこの小説の中で何とも不気味な力を持つが、それは、現代において、あまりにも「贋金」が氾濫しすぎているからだろうか。2016/07/05

うらなり

26
最後のほうは作者が疲れてしまい結論を急いで少し緻密さに急に欠けるような気がする。でも名作はなぜかこころに残り、ふとしたことでなぜ、ジョルジョは死のうとしたか、ボリスは死ぬ必要があったのかを思い出される。2021/04/04

ハチアカデミー

19
小説にしかできない人物の描き方とは何か、を追求したジイドは、おそらく人間の関係性から生まれる様々な感情の揺れを描く方法を選んだ。主要人物であるベルナールとオリヴィエの二人の周辺人物・関係人物たちが蜘蛛の巣の様に作品世界を作り上げていく。そこでは、金銭のやり取りと感情のやり取りが繰り広げられる。本当の「金」は二人の友情のはずなのに、周辺の「贋金」に振り回されていく。本当の「愛」に辿りつかない男女もいる。後世への影響の大きさを感じさせられる傑作だし、ちゃんと楽しめる、面白い小説である。相関図は必要だけど。2015/03/27

mstr_kk

15
長年の積読本をついに読み終えました。上巻に比べると、下巻はかなり面白く、数日で読むことができました。上巻であきらめなくてよかった。しかし、これ、全体のまとまりがなさすぎて、そのくせ世界の広がりがなくて、やっぱり好きな小説ではありません。たしかに、従来の小説に対するアンチテーゼにはなっているのでしょうし、「テーマを十分に展開したり深めたりできていない」と批判しても、「だからどうした」っていわれてしまうのでしょうが。2020/05/04

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