出版社内容情報
ロマン・ロランは,人生と芸術に悩む一青年であった若き日の自分の手紙に返事を寄せて励ましてくれた老トルストイを終生,人生最大の師と仰ぎ,尊敬と愛情を抱きつづけた.その恩にむくいるべく著わしたのがこの伝記である.ここには超人的な偉人トルストイではなく,人間のうちでも最も人間的なトルストイが描かれている.
内容説明
ロマン・ロランは、人生と芸術に悩む無名の一青年であった若き日の自分の手紙に返事を寄せて励ましてくれた老トルストイを終生、人生最大の師と仰ぎ、尊敬と愛情を抱き続けた。その恩にむくいるべく筆をとったのがこの伝記である。ここには超人的な偉人トルストイではなく、人間のうちでも最も人間的なトルストイが描かれている。
目次
最近に消えた光明
「幼年時代」
コーカサスの物語
「コサック」
「セヴァストーポリ物語」
「三つの死」
「結婚の幸福」
「戦争と平和」
「アンナ・カレーニナ」
「懺悔」および宗教的危機〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
18
中年となれば残りの人生を考える。そこで、○○の生涯というタイトルは今後の人生を考えるには不可欠の書物。ただ生きているだけでじゅうぶんで、生命が善、幸福のすべてなのであった。生命=神(傍点30頁)。芸術は生活の鏡。生活が意義を失うと鏡の芸に面白味がなくなる(70頁)。愛は人生のあらゆる矛盾を解決する真の幸福。最上の幸福。真の愛は人が個人的な幸福を得ることはできないと覚(さと)った時に、初めて実現(77頁)。わたしが10年前に幸せになってほしいと卒業生に書いてから幸せばかり聞くが、真の幸せはこのようなものか。2014/01/23
会津の斎藤
16
ベートーヴェン・ミケランジェロに続いてのトルストイ。前述2人と比べ、ある程度作品を読んでいるので、 スッと頭に入ってきました。 清廉な読後感をいつも感じていたトルストイ。 この本を読んで、何となく分かった気がします。2021/06/24
ごー
6
これは死ぬまで手元に置いておきたい本の一つ。トルストイの一生を振り返りつつ、その著作の読書案内にもなっている。ロマン・ロランはトルストイの大ファンなのだけれど、盲信しているというわけではないのもよい。2016/05/05
twinsun
5
充分な経済的基盤と人間の造り上げたものすべてに対する猜疑心を持ち万人の権利と幸福を願うが故に苦しみぬいた男。ツルゲーネフのもっと気楽にやれという言葉にも教会の枠にとりあえず嵌っていろという忠告にも家庭平和を望む家族の想いにも応えず自分の醜さから顔を背けては振り返る。治らず深くなる傷を直視して舐め続けた男。まだ読まぬ作品は読み、読んだものは読み返したくなった。2023/06/13
えすてい
5
ロマンロランは生涯トルストイを師と仰いでいた。トルストイに尊敬の念が消えることはなかった。だが、この本では無条件でトルストイを賛美することは厳に慎まれている。むしろ、同じ作家・文筆業だからこそ、尊敬の念は抱くが同時に厳しい目線も向ける。だがそれは冷たさではなく、暖かさ。トルストイがロマンロランに宛てた手紙・トルストイのガンジーに宛てた手紙、どれも、ロマンロランがトルストイをそういう目で見ているからこそ、読んでいて伝わってくるものがある。2017/12/24