出版社内容情報
ライン河畔の貧しい音楽一家に生れた主人公ジャン・クリストフは,人間として,芸術家として,不屈の気魄をもって,生涯,真実を追求しつづける.この,傷つきつつも闘うことを決してやめない人間像は,時代と国境をこえて,人びとに勇気と指針を与えてきた.偉大なヒューマニスト作家ロマン・ローランの不朽の名作.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
68
本巻では主人公に、前巻の友情や恋などの体験が霊感として結晶し溢れ出す内部充実の時が訪れます。しかし豊かな天分と頑健な精神を持った青春の何という傲慢さ!彼は過去や現在の音楽家を批判しドイツの理想主義を否定し孤立することに。その中で自作や叔父を通した出会いから世界を美しいものに見たがる理想主義の悲壮な美を認めるに至りますが、自身は「不幸をも正視しーそして笑ってやる」ような芸術を目指すことを誓います。それは実現できるのか。ドイツを飛出して行ったパリでの孤独、貧窮、衰弱が彼の精神を磨いてゆくのを眺めながら次巻へ。2022/02/24
ベイス
62
クリストフの正義に照らすと、ほとんどあらゆることが不正義になる。それを包み隠さず相手にぶつけていくから、どんどん孤立していく。それでも彼は戦いを決してやめない。自分に嘘をつかない。そんな姿に、勇気をもらえる。かく在りたいと、励まされる。冗長で、読み進めるのは困難だが、その先に突如として出くわす、奇跡のような場面。シュルツとの出会いと別れ、その余韻冷めやらぬ直後のゴットフリートと盲目の娘との心の交流。ありがとうロマン・ローラン!と心の中で叫ぶ。電車で読んでてずっと目頭抑えるのが大変だった。2022/04/29
のっち♬
48
あらゆるものを音楽で抽出し種々の世界を包括せんとする主人公。「お前の言うことを聞いているとそれでもドイツ人かと疑われることがあるよ」作品は成熟せず、理解は得られず、悲しみと葛藤を嘗める日々の中、フランス音楽の中に才能と素材を見出す。「人生だ!全人生だ!すべてを見、すべてを知ることだ。真実を愛し求め抱きしめることだ」傲慢な彼に対する小都市の執拗な怨恨は彼を苦しませるが、それもまた生きることに繋がり、その内部の光明の跡を人々の心に残していく。闘争と苦悶に鍛えられながら、新旧両時代の橋梁たるべき魂の彷徨は続く。2020/03/04
U
34
前巻とは打って変わり、感情の起伏が激しく、ダークなクリストフに戸惑いました。だからこそオリヴィエとの出会いがひき立ち、それが一筋の光であるかのように感じられました。2018/08/13
Bashlier
30
5/5 感情を作中世界に引き込む傑作。ベートーヴェンの中に”イマジナリーフレンド”としてロランが入り込み、「ジャン・クリストフ」として人生を共にしていく本書。2巻は青年期の苦悩を描きます。抜きん出た才能を有するが故、俗人との恒久的かつ致命的な摩擦に蝕まれる日々。天は才を与えた人に対して、引き換えのように試練に満ちた波乱の人生を課します。天与のものが大きければ大きいほど、周囲からの嘲笑の声は大きくなる。そんなハードモードの人生は恐らく後半爆発型。夜明けの前の一番深い暗闇が見えてきているように感じます。2023/07/19