出版社内容情報
ルナアルの自然と人生に対する観察記録集ともいうべき作品集．故郷の土地や農民を描く『土地の便り』には，文学者ルナアルの鋭い観察のかげに，人間味のこもった愛情と共感が自然ににじみ出ていて我々の感動を誘う．その他『エロアの日記』，『ぶどう畑のぶどう作り』等ルナアルの特色を最もよく表わした作品を収める．
内容説明
自分の少年時代を苦い回顧の思いをもってつづったのが『にんじん』であるとすれば、『ぶどう畑のぶどう作り』のルナアルはよりストイックな心境をとおして人生と自然とに慎ましい微笑を送っているのだと言えるだろう。「イメージの狩人」が郷里の農民生活から得来たった鮮やかな観察の記録。
著者等紹介
ルナアル［ルナアル］［Ｒｅｎａｒｄ，Ｊｕｌｅｓ］
１８６４年２月２２日。フランス国ニヴェエル県シャアロンに生る。１８８３年。高等学校卒業。「ゴオロア」紙の主筆に面会し、爾後同紙に寄稿す。１８８５年。短篇集「村の罪悪」出版を拒絶せらる。同年、ブウルジュの歩兵連隊へ一年志願兵として入隊す。１８８６年。歩兵伍長として除隊。１８８８年。「村の罪悪」出版せらる。１８８９年。メルキュウル・ド・フランス誌の再刊に当たり、同人に加わる。１９００年。戯曲「にんじん」アントワアヌの手により上演さる（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
10
1894年初出。「税金」という話（１６４頁～）。翌年の課税として９フラン５０サンチーム納入すべしという新しい白箋。収税官吏。税務署職員か。死ぬまで払うという。この勘定には子供は入らない。だから子供の代りをこしらえるという。丁年未満ってやつが要るんだから、一人こしらえてやろう、という魂胆。消費増税やだなぁ。「鼬（いたち）」という話（１９８頁）。たったの２行。「貧乏な、しかしさっぱりした、品の好い鼬先生。ちょこちょこと、道の上を往ったり来たり、溝から溝へ、また穴から穴へ、時間ぎめの出張先生」。マメにやるかな。2014/02/21
シュエパイ
7
自ら不幸せになろうとしているようにしか思えない。少なくとも、幸せそうにはみえないのに、現状に固執しようとしてるようにしか。最初は少し腹が立って、それからだんだん、哀しくなってきた。わからない。作者さん、いったい何を思っていたの？哀しかったから共有したかったの？それとも、ただ苛立ちを共有したかったの？うまく受け止められないのは、きっと私に経験や知恵といった文脈がたりてないから、なんだろうなぁ2016/05/07
ぱせり
5
人々のささやかな暮らしや、小さな生き物たちの姿を、写真に撮るようにうつしていく。私が好きなのは、人以外のスケッチ。虫や鳥、家畜たちのこと。一番好きなのはこれ。「壁――なんだろう、背中がぞくぞくするのは？」「蜥蜴――おれだい。」ルナールの『博物誌』の続きを読んでいるようで、こういうのをもっと読みたいな。2022/03/03
がんぞ
4
１９世紀のフランスはドラマチック本源だけあって小説(ロマン)の本場だ。嫌がる豚を殺す場面の凄まじさ！爪が珍味。「牛は牛舎に入れるだけではいけません。食べるように仕向けないと疲れてるから寝てしまいます」。農家の老女は一回も日曜の教会を欠かさなかった「何度かの出産も折良く日曜ではなかった」だが、ある日居眠りを／『エロアの控え帖』など人間の醜さ苦しみを描くが、それが人生だともとれるし、悪は儚い、善はそれ以上にとも感じる。善意なんてものはない人前で良い格好したいだけだよ。信仰がなくなったらそう言わないものは偽善者2015/03/17
KUMAGAI NAOCO
2
にんじんと呼ばれる少年の話で有名なルナールの作品の一つ。田園地帯で生活する人々の日常を3章に分けて描いているが、2章では文学者エロアが身の回りの事を何でもかんでも洗いざらい文章にして発表してるので、家族、親戚、村人と皆の怒りが頂点に達しているのがまるでTwitterで何でも暴露されたみたいな感じだし、3章は同じ作者の博物誌そのままだし、のどかな地方でのあらゆる物事を描写してる様で読みやすかった。2022/07/20
