出版社内容情報
30歳のモーパッサン(1850―1893)が,彗星のように文壇に躍り出た記念すべき中篇小説.普仏戦争を背景に,人間の醜いエゴイズムを痛烈に暴き,人間社会の縮図を見事なまでに描き切った作品.新訳.
内容説明
30歳のモーパッサンが彗星のように文壇に躍り出た記念すべき短篇小説。普仏戦争を背景に、ブルジョワや貴族や修道女や革命家といった連中と1人の娼婦とを対置し、人間のもつ醜いエゴイズムを痛烈に暴いた。人間社会の縮図を見事に描き切ったこの作品は、師フローベールからも絶賛され、その後の作家活動を決定づけた。新訳。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
216
人間を辞めたくなるほど、負の面を強調した本。読後感も暗くなる。他人をさげすんで何も感じない人が幸せに暮らせ、そういったものを感じやすい人は特別に貧乏くじを引かされる。最後の場面でさらにそれが強調される。人間とは何か、綺麗事ではなく見せつけてくれる本。 鬱になりそうだけど、これが現実なんだなぁ。
マエダ
101
人々のエゴや無関心、偽善、それらの表現が短い文章で無駄がなく書かれている。ストーリーももちろん面白いタイトルの脂肪のかたまりは娼婦の女性の渾名だがなかなか残酷である。2017/10/15
Willie the Wildcat
86
典型的な階級社会をモチーフに、ヒトの心底の暗部を描写。登場人物1人1人の目的と手段、そして根底の大義に垣間見る人間性。薄ら怖いのが、理詰めの論旨で踊らされるヒトの心。対極の心の象徴が、ブールと修道女。前者が「拒んだ」大義、後者が「暗黙の了解」をした大義。表層的には戦争だが、深層的には愛国心が共通点。突き詰めると、戦争も大義を振りかざした論者に振り回される国民、という構図と解釈できる。自己、つまり軸がぶれないこと。表題は、成長と共に軸を取り巻くようになる阻害要素を示唆しているのかもしれない。2019/10/02
やいっち
81
モーパッサンは好きな作家。「女の一生」も二度三度と読んだが、「脂肪の塊」は何度読んだやら。シニカルな視点からの作品は、若い自分には堪らないものだった。いま(モーパッサンの亡くなった齢を越えたいま)改めて読んだらどう感じるか……
NAO
78
娼婦を「脂肪のかたまり」と呼ぶその呼称そのものが差別的だが、いったい、差別という脂肪のかたまりに包まれ人間らしさを失くしてしまっているのはどちらなのか、と言いたくなる。この同乗者の中に聖職者がいたというのもなんともたまらないことで、この作品は、階級差別だけでなく、聖職者の腐敗も批判しているのだろうと思う。なんとも言えないむき出しの人間のエゴを描いた作品だが、これはモーパッサンの処女作で、師匠のフローベルに絶賛されたという。2018/06/12