岩波文庫
ボヴァリー夫人 〈上〉 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 244p
  • 商品コード 9784003253816
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

出版社内容情報

これは夢と現実との相剋の書であり,空想と情熱とが世俗のうちに置かれたときの不幸を物語る悲劇である.作者の目的は飽くまでも「美」の追究であったが,しかしこの小説が作者の書斎のなかで美を枢軸として自転している間に,それはまた十九世紀フランス文学史上では,写実主義の世界に向って大きく公転していた.一八五七年.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

312
これは、まず"眼"の小説だ。19世紀後半、ルアン郊外のトストとヨンヴィルが物語前半の舞台だが、そのいずれもが実に克明に描き出されており、私たち読者もまた、そこに身を置くかのごとくだ。人物描写についても同様で、彼らすべての善良さや凡庸さ、あるいは現状に満足して暮らすさまが活写される。そこでは時間もまた停滞しているかのごとくだ。そんな中で、一人夢を見るのがボヴァリー夫人である。彼女の心性はロマネスクではあるものの、それとてもまた彼女の経験と想像の枠を超えるものではない。さて彼女の逸脱は、どう展開してゆくのか。2015/12/18

ヴェルナーの日記

142
フローベールの作風は、客観的で精密な情景描写を重んじた文体を通じ作中人物と自己を同化させることを信条とした。いわゆる写実主義と呼べるもので、バルザックやディケンズ・ドストエフスキー辺りが写実主義の文学に分類される。日本では坪内逍遥を筆頭に尾崎紅葉・山田美妙・幸田露伴らがこれに類する。フローベールの手法は、ゾラ・モーパッサンらに引き継がれ、写実主義から自然主義という文学的な潮流を創る。日本における自然主義派は島崎藤村・田山花袋・国木田独歩・徳田秋声・正宗白鳥といった私小説という日本文壇界独特な潮流となる。2016/10/08

セウテス

62
〔再読〕真面目だけが取り柄の医者シャルル・ボヴァリーに求婚され、農家の暮らしに嫌気がさしていた娘エンマは、ボヴァリー夫人となる。本で読んだ刺激ある生活、自分を輝かせてくれると信じて結婚をした彼女にとって、当たり前の生活はつまらないものであった。彼女は新しい刺激を求めて、不倫にのめり込んでいく。彼女が自己愛の強さから現実を直視出来ず、理想は叶うものと信じる姿は滑稽ですらある。たいへん細やかな風景と人物描写で、まるで絵画を観ているようだ。発売当時は反道徳的だと裁判にもなったらしいが、禁書にならなくて良かった。2017/12/20

えりか

41
丁寧な描写から町の情景の美しさが伝わってきた。のどかで美しい町並みの中で生活する人々の暮らしぶり。その平凡さはボヴァリー夫人にとっては、退屈で青白くさせるものでしかない。情熱を、恋を求める彼女はどう転がっていくのか。下巻へ。2016/05/12

30
日常の暮らしに幸せを感じられないボヴァリー夫人ことエンマは、満たされない心を不倫の愛で埋めようとする。上巻部分のストーリーは現代の昼ドラにも通ずる王道のような展開で、人物の心象や風景の描写が精緻なのが特徴的。エンマの感情の流れも丁寧に描かれているので、不倫を批判する気持ちよりも同情する気持ちのほうが強くなってしまった。理想を諦めて妥協ができなかったエンマはとてもピュアだと思う。下巻では悲劇的展開になりそうだけれど、果たして。 2014/09/22

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