岩波文庫
「絶対」の探求 (改訳〔版〕)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 367p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003253069
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

出版社内容情報

科学上の巨大な難問,万物に共通する物質「絶対」の研究に打ち込むバルタザール.探求のはてに「ユーレカ(見つけたぞ)!」と叫んでむなしく息たえる.情熱に憑かれた人間の偉大と悲惨,「絶対」という観念のもたらす恐しい力を,フランス王政復古期の一地方都市を舞台に旺盛な筆力で縦横に描ききった.

内容説明

科学上の巨大な難問、万物に共通する物質「絶対」の研究に打ちこむバルタザールは探求のはてに「ユーレカ(見つけたぞ)!」と叫んでむなしく息たえる。情熱に憑かれた人間の偉大と悲惨、「絶対」という観念のもたらす恐しい力を、フランス王政復古期の一地方都市を舞台に、旺盛な筆力と緊密な構成で見事に描ききった名作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のっち♬

54
フランスの王政復古の地方都市を舞台に、科学の難問に打ち込む男とその家庭が描かれる。舞台の細密な描写にはじまり、シンプルなストーリー構成で、破滅に向かって驀進する男の姿は鬼気迫るものがある。「彼は夫でも父親でも市民でもなかった。彼は科学者だった」財産を使われても愛情を捧げる妻、家庭を再建しようする娘とのやり取りも引き込まれるものがあり、一家がまるごと狂気じみている。劇的な展開がなく、呆気ない幕切れなので盛り上がりに欠けるが、情熱に憑かれた人間の偉大と悲惨、「絶対」の観念がもたらす恐ろしさがひしひしと伝わる。2018/01/18

ソングライン

20
炭素からダイヤモンド作る実験に取りつかれたクラース、自分の財産から妻の財産までをつぎ込み、やがて心労で妻が亡くなります。残された子供たちの財産にも手を付けようとする父と対決する長女マルグリット、そして最後に迎える悲惨な結末。無限の美や真に魅せられた愚かな人間の悲運を冷徹に描くも、マルグリットの優しさ、賢明さにホッとする物語です。2021/02/13

ラウリスタ~

15
短篇『知られざる傑作』に対応するといえる短篇『絶対の探求』。化学、というよりもむしろ錬金術に取り憑かれて、破産していく「学者」のみじめさ。とはいえ、専門用語がつらつらならぶ頁は一桁ほどで、後は延々と続く破産へのロンド。100分の1に縮めても、特に問題はなさそうだ。バルザックって、本当は長編を書くのが苦手なんじゃ。ピケティがデータを取り出すのに適した、具体的な利息計算と、年金獲得の苦労。数十億円の資産を持ちながら、「ああ、私たちはもう奈落の底なんです!」って叫ぶヒロインも、現代人からすると縁遠い。2015/11/20

きりぱい

11
これでもかと落としておいて上げたと思ったら、また落とされて・・よくもまあ、これだけ揺さぶってくれるものだと、憤りと涙に自分が忙しい。真の愛情で結ばれた夫婦だったのに、科学熱にとり憑かれた夫は、家族のため、名誉のためと、結果、家族を犠牲にしていることに気付かない。実験続けたさに甘言を繰り出し、あとひとつ実験すれば、あと少しお金があればとのたまう時の嫌さは、もはやギャンブル熱と変わらず、ほんとにもう見下げ果てた父親。一途なクラース夫人と気高い娘マルグリットの言葉は父を変えられるのか?後半が面白い。2011/02/17

記憶喪失した男

9
元素周期表が完成する前の化学者の物語。文章が小気味よくて、科学の雰囲気がする良作。2018/10/18

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