出版社内容情報
Kについてはごく平凡なサラリーマンとしか説明のしようがない.なぜ裁判に巻き込まれることになったのか,何の裁判かも彼には全く訳が分らない.そして次第に彼はどうしようもない窮地に追い込まれ…….全編を覆う得体の知れない不安.カフカはこの作品によって現代人の孤独と不安と絶望の形而上学を提示したものと言えよう.
内容説明
Kについてはごく平凡なサラリーマンとしか説明のしようがない。なぜ裁判に巻きこまれることになったのか、何の裁判かも彼には全く訳がわからない。そして次第に彼はどうしようもない窮地に追いこまれてゆく。全体をおおう得体の知れない不安。カフカ(1883‐1924)はこの作品によって現代人の孤独と不安と絶望の形而上学を提示したものと言えよう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ykmmr (^_^)
147
何故か、理由わからず…突然逮捕される。しかし、罪状ほぼなし。現代でいう『保釈』みたいな生活。それで、周囲の知り合う人に、意味深に翻弄され、乗らされたっしても、冷静に対応。こうなると、『運命』はいかに…。のオチに当然なる訳だが、そこに、カミュの『異邦人』と同じ『不条理』とは何か?がかかってきて、実に似ている。ヒューマニズム作家で、名前も似ているせいか、時代が少し違えど、=に見える2人。カミュもカフカに影響を受けてはいるらしいが、この作品にも繋がりを見出している。『不条理』・『無関心』。こんな言葉が2023/04/02
ケイ
133
彼の運命を決定付けたものは何か。一たび告発されれば、起訴されれば、それは有罪宣告だ。本人に思い当たるところがなくともそれは同じこと。その不条理さをシニカルに見て、深刻さに目を向けず、周りに対して自分の置かれた不条理さを断罪しようとしたことで、Kは自分を追い込んでいく。そもそもKは無罪であったのか。私は何で裁かれるんでしょうね…と嘘ぶいてみせる。そんな自分を起訴する体制を批判することで、彼は自分にかける枷を重くする。気づけば味方は誰もいない絶望的な状況であり、その状況は文字通りそうであったのだ。2016/05/07
ハイク
113
この本はカフカの死後、使用していた机の引き出しから原稿を発見されたという。不条理の世界を描写して読者に最初から最後までもやもや感を与えている。主人公のヨーゼフ・Kは30歳の独身で銀行員の管理職。ある日突然身に覚えのないのに逮捕された。何の罪か全く分らず優秀な弁護士を探しても一向に好転しない。この舞台は第一次世界大戦の頃の中欧らしき都市で全体主義を感じさせる雰囲気の設定であるようだ。自分の運命はどうあがいてもどうにもならない世界即ち不条理の世界をこれでもかと描いてゆく。現代でも似た国は少なからずあるのだ。 2018/04/09
扉のこちら側
88
2016年1086冊め。【245/G1000】身に覚えのない罪で突然逮捕され、茶番劇のような取り調べと裁判の末に刑を受ける悲劇。このあたり、刑事裁判の有罪率99.9%という日本を思って怖くなる。この作品においては結局彼の罪がなんだったのか明らかにならないところが不安感をあおり、パラノイアか夢オチかとも思わせる。何人か出てくる女性の描き方も屈折している。2016/12/17
のっち♬
77
「裁判所の実体は、たくさんの精巧なしかけの中に見えなくなっているんですが、万事このしかけしだいなんですからね」理由が分からないまま逮捕・起訴された男が様々に立ち回りつつも窮地に追い込まれていく。ページが進むにつれて得体の知れない不安感や浮遊感が作品全体を覆い尽くし、著者の法への強い不信や社会からの疎外感が伝わってくる。コミカルさのある人物描写も特徴的で、中でも女性や弁護士の造形はかなりの屈折ぶり。「すべてを真実だと思う必要はないのです。ただそれを必然だと思えばよいのです」どんな解釈も絶望の表現でしかない。2018/03/19