出版社内容情報
ある朝目ざめると青年ザムザは自分が一匹の毒虫に変っていることに気づいた.以下,変身したザムザの生活過程がきわめて即物的に描かれる.カフカ(一八八三―一九二四)はこの物語で,自己疎外に苦しむ現代の人間の孤独な姿を形象化したといえよう.二十世紀の実存主義文学の先がけとなった作品である.『断食芸人』を併収.
内容説明
ある朝目ざめると青年ザムザは自分が1匹のばかでかい毒虫に変っていることに気づいた。以下、虫けらに変身したザムザの生活過程がきわめて即物的に描かれる。カフカ(1883‐1924)は異様な設定をもつこの物語で、自己疎外に苦しむ現代の人間の孤独な姿を形象化したといえよう。20世紀の実存主義文学の先がけとなった作品である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
森の三時
46
あまりにも有名ですが、ある朝起きたら突如として虫に変身していてその日から家族に厄介者扱いされ…、というもの。作中なぜ虫に変身してしまったのか定かではないため読者は隠喩や寓話として様々な解釈や考察をしないではいられず不条理だからこそかえって奥深い。彼はこれまで一家の家計を支える大黒柱として、会社の営業職として身を粉にして跳び回っていたはずではないか。読みながらこれは誰にでも起こりうることのように思われた。激務によりメンタルを壊したり過労や事故で健康を損ねたり、人生で思いがけず起こる不幸な出来事が想像された。2023/08/18
フム
42
再読。2014年に読了の登録があるものには感想がなかったが、なぜだろう。感想の記述がない理由は『1984年』もそうであったが、その容赦ない小説の結末に言葉を失ってしまったからだと思う。朝目覚めた青年ザムザは毒虫と化した自分に気づく、という度肝をぬくような冒頭から、家族の戸惑いやこの事に翻弄される姿にはユーモアのようなものすら感じさせるのだが、読み進めるうちにその笑いはだんだん冷たく凍りついていく。再読のきっかけは、頭木さんの本だが、これは孤独で弱ったときに読んではいけない類いの本なのではないかと思った。2021/03/22
西野友章
42
明らかにカフカは、断食という精神の行為を否定的に描いている。あるいは逆説的に描いていると思った。そうするしか仕方のない、あるいは生き方がわからない人に対して、世間の理解が低すぎると訴えているのかもしれないと思った。また、世間の関心は、断食という精神世界よりも、豹のような、なんでも食べる精悍でわかりやすい肉体にすぐに飛びついてしまう、無分別への警告なのかもしれない。あるいは、断食芸人は、断食芸としての生き方に確固たる信念のもと死を迎えたことは、書くことでしか評価されないカフカの分身かもしれない。。2019/03/09
蘭奢待
32
極めて久しぶりに読んだ。ディテールとラストの記憶が飛んでおり楽しめた。 読んだのはお父さん訳のほうの版。少々読みにくい。 2022/08/20
金吾
30
ともに内面と外見の違いを考えさせられます。「断食芸人」の結論は意外感があり、食事だけでなく、様々な点において周りから何故やらないのかと思われる人たちの一つの答えになるのかなと思いました。2023/11/07