出版社内容情報
ある夜,青年ハインリヒの夢にあらわれた青い花.その花弁の中に愛らしい少女の顔をかいま見た時から,彼はやみがたい憧れにとらえられて旅に出る.それは彼が詩人としての自己にめざめてゆく内面の旅でもあった.無限なるものへの憧憬を〈青い花〉に託して描いたドイツ・ロマン派の詩人ノヴァーリス(一七七二―一八〇一)の小説.
内容説明
ある夜、青年ハインリヒの夢にあらわれた青い花。その花弁の中に愛らしい少女の顔をかいま見た時から、彼はやみがたい憧れにとらえられて旅に出る。それは彼が詩人としての自己にめざめてゆく内面の旅でもあった。無限なるものへの憧憬を〈青い花〉に託して描いたドイツ・ロマン派の詩人ノヴァーリス(1772―1802)の小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
89
詩人、ノーヴァリスの半自伝的作品。ハイリッヒは夢の中で出逢った少女(青い花)を求めて旅に出る。旅の途中に出逢った人々との物語の中で彼が見つけたのは、自分の中にこんこんと湧き出でる詩情と自分自身だった。自分を知りたいものは自己を見つめなければならない。それを一番、容易くするのが人が紡ぐ物語に耳を傾け、その中を泳ぐ事なのかもしれません。個人的に一番、現実的に生きているようだが、若い頃の夢にハイリッヒ君と同じく、青い花に出会ったお父様が印象的だった。彼に『君の名前で僕を呼んで』のエリオ君のお父様を重ねてしまう 2018/06/27
絹恵
60
感覚はたったひとつだったのだと気づくことが出来たのは、世界でたったひとりのきみが愛を教えてくれたからです。"ぼくを愛してくれるの"と不安の根元を問えば、"愛っていったい何なのかしら。でもわたしに言えるのは、今はじめて生きてるって気がするし、こうしていると心が安らいで、あなたのためならすぐに死んでもかまわないって気がすることなの"と凛として応えてくれるきみは永遠にぼくの青い花。2015/04/21
syaori
58
ドイツ・ロマン派を代表する詩人の一人ノヴァーリスの未完の大作。青年ハインリヒが夢に見た青い花に象徴されるポエジーが、彼の遍歴とともにギリシア的なもの、東洋的なもの、ゲルマン的なものと触れ合って高く遠く「かなたへと飛翔」していく伸びやかさに魅了されました。作者の死により物語は第一部、理想の時代を顕現させる詩と愛の力を示す「期待」で終わっていて、そこまででも作者は十分に詩人の言葉の「魔術」を示しているのですが、それだけにこの「期待」が「実現」したとき、ハインリヒが到達するだろう高みに思いを馳せてしまいました。2018/09/04
えりか
46
甘美な世界だった。私達は愛を慈しむ時、過去を嘆く時、自然の美しさに驚嘆した時、きっと誰もが詩人になる。心が溢れる言葉を紡いでいく、その言葉は詩となり、永遠の愛には美しい花を、過去には涙を、自然には震えを添える。それはまるで、万物は詩でのみ真に表現することができるのだと。未完であるのが惜しい。2016/07/21
あっきー
20
⭐2 桑原世界近代小説五十選19冊目、中盤以降恋人の父親がメールヒェンを話し始めエロスが割り込んできてからややこしくなり話についていけなくなった、詩的な表現の盛りの多さに酔っぱらいそうで、さすがロマン派文学の代表作というだけのことはある、要再読2021/10/10