出版社内容情報
アメリカ中西部の田舎からシカゴへやって来たキャリーは,華やかな都会生活の魅力にとりつかれたあげく,妻子ある酒場の支配人とニューヨークへ駆落ちする.そこで,キャリーは女優として売出し成功するが,男は没落し労働争議に巻込まれてゆく….都市小説の先駆となったドライサー(1871-1945)の代表作.(全2冊)
内容説明
大都会ニューヨークで、キャリーは認められて女優への道を歩み始め、大成功をおさめる。一方、ハーストウッドは、事業に失敗して、職さがしもままならず没落してゆき、キャリーとの溝は深まるばかりであった。そして労働争議に巻き込まれて自殺してしまう。現代アメリカ小説の出発を画した記念碑的作品。1900年刊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
102
駆け落ちしてニューヨークに出てきたキャリーは、凋落の一途を辿るハーストウッドと離別し女優として成功の道を歩む。後者の視点により重きが置かれ、ストライキの描写には新聞記者だった著者の着眼が窺えるし、路頭に迷った際の支離滅裂な想念にはインテリ層への当てつけが見られる。とはいえ、ラスト6ページは本作があくまでキャリーの成功譚であることを示すもの。夢見る人に不当に厳しい「世間の道徳や掟」を問題提起する一方で、善いものを絶えず渇仰しても決して満たされない消費文化の孤独感や無力感を通底させる点が一層深みを与えている。2021/06/27
NAO
69
この作品が書かれた当時はまだ女性の貞操について厳しい社会で、『シスター・キャリー』は激しく非難され、忘れ去られた。だが、時が経ち、キャリーは新しい都市型の女性として見直されるようになったという。キャリーは、行きがかり上二人の男の愛人となったが、二人を愛していたわけではなく、常に外に向かってアンテナをのばしていた。彼女が愛していたのは都会の華やかな暮らしであり、自分を華やかに見せることだった。まさに、彼女は、新しい都市型の女性だった。ところで、キャリーを成功に導いたのは「都市型の消費生活」だが、⇒2021/12/30
みっぴー
51
舞台で華々しく成功する女性と、転落する男性。二人の明暗を分けたのは、単なる運だけではなさそうな気がします。キャリーには、ハーストウッドが失った気力と若さが残っていた。富と名声を手に入れる人がいる一方、今夜寝る場所すら無い人もいる。大都会は光と闇のコントラストが毒々しいまでに濃い場所なのだと感じました。もちろんNYに限らず東京も然り。キャリーの栄華がいつまで続くのか気になるところです。都会も人も、弱者には容赦無いし、成功したとたんに手のひらをかえす。分かってはいるけど、なんだか複雑な気持ちになりました。2016/08/07
ソングライン
20
妻子を支配人の職を捨て、キャリーとともにニューヨークへ駆け落ちするハーストウッドは新たな人生を生きようとするも、事業に失敗し困窮に苦しんでいきます。一方、キャリーは女優の道を目指し運よくその才能が認められ、スターへの道を進み始めます。次第に足手まといになっていくハーストウッドを捨て己のために生きようとするキャリー、そして没落していくハーストウッドには悲しい最後が。自分のために生きようとした結果、二人の成否は異なる結末ですが、ただ虚無感のみが残るのです。2022/09/10
きのこ
16
ガーディアン必読60下/1000 度々心情説明や弁護が入るのが面白い。人生は旅。ビバ、キャリー!2018/04/13