出版社内容情報
「黒猫」「モルグ街の殺人」など短篇小説の名手として知られるポー(1809-49)は,イエーツが喝破したように「古今東西を通じての偉大な叙情詩人」であった.愛の喪失への悲しさとそれを追う夢をテーマとするポーの詩から,代表作「大鴉」をはじめ,「アナベル・リー」「ヘレンに」「鐘さまざま」など叙情詩を中心に23篇を収録.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
161
対訳なので、ポーの原詩を音読できるのが最大の利点。萩原朔太郎が『詩の原理』で、翻訳詩の不可能性を論じていて、その典型的な例としてポーの「大鴉」をあげている。後半のリフレイン"Nevermore"を日夏耿之介訳では「またとない」となっているが、これでは詩の本質としての韻律が生かされないとしている。まさにポーの詩は韻律こそが生命だ。また、この「大鴉」もそうだが、「アナベル・リー」にしても、彼の詩には強くネクロフィリアの匂いが付き纏う。すなわち、魂の律動と死の静寂が交錯するところにこそポーの詩の世界があるのだ。2014/03/31
けろりん
61
怪奇幻想文学の旗手というイメージが先行するエドガー.A.ポーは、イェーツをして「古今東西を通じての偉大な抒情詩人」と云わしめる詩人でもあった。愛情や恋慕を花の香や夜空の星と詠いあげ、別離や死、霊魂といった冥いテーマも繊細で耽美な詞で、韻や文字の連なり、行の容にまで神経を行き亘らせた詩文は、日本語に翻訳するには、文語体が相応しいと思うが、本書は敢えての口語。平易且つ良く練られた対訳の現代文に、注釈、解説も行き届いているので、原文を音読し、ポーが目指した「魂の音楽」の旋律と韻文の美しさをじっくりと味わいたい。2022/07/11
マンセイ堂
42
悲しい詩が多かったように思います。若くして愛する人を亡くした事が理由なのでしょうか、、、「あなたと二度と会えなくてもずっとあなたを思い続ける」というような詩があり、一途でいいなと思う反面、その人生はとても辛いなとも思ってしまいます。2013/09/03
おにく
29
ポーは、新聞や雑誌向けの短編を“大衆娯楽小説”と位置づけ、大衆が喜ぶよう、より過激な描写を目指し、それが今日のイメージになっています。そのため、彼の本質を知るためにも、詩人としての一面に目を向けたくなります。この本は、自分のように詩に触れる機会の無かった人でも、現代語の読みやすい訳文と巻末の解説といった構成のおかげで、初心者にも優しい。読んでいて何度も「良い仕事しているなぁ。」と思いました。また、英語の発音や言葉のリズムについて、自分はYouTubeの“朗読”を検索して聴いています。(↓つづく)2016/10/13
Tonex
23
ナボコフの『ロリータ』関連で「アナベル・リー」を読むため。/有名な「大鴉」も初めて読んだ。▼対訳本。原文と訳文を照らし合わせながら読むと、日本語だけで読むより理解しやすいが、読むのが面倒。やはり外国の詩は苦手。2016/02/19