出版社内容情報
グラナダの丘に今もその姿を残すアルハンブラ宮殿.アーヴィング(1783―1859)はアメリカ公使館書記官としてスペインに赴き,偶然の幸運からモーロ人の築いた城に滞在した.宮殿の華麗かつ荘厳な姿とそこに暮らした幻想的な日々が,処々に伝わるさまざまな物語を織りまぜて,詩情豊かに綴られる.(全2冊)
内容説明
城を抜け出し、フクロウとオウムをお供に恋の巡礼の旅に出る王子。モーロ人の遺産を偶然手に入れるお人好しの水売り。亡霊の遺した銀のリュートを奏でる美しい乙女。片腕の総督、豪傑な兵士…。伝承の世界の人びとが、アルハンブラを舞台によみがえる。
目次
アルハンブラへの来訪者たち
遺品と家系
ヘネラリーフェ離宮
アフメッド・アル・カーミル王子の伝説―恋の巡礼行
アルハンブラの丘をマテオと歩く
モーロ人の遺産の伝説
ラス・インファンタスの塔
三人の美しい王女の伝説
アルハンブラの薔薇の伝説
歴戦の老兵〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
32
上巻は海によってほかのイスラム教国と断絶されたグラナダ王国の、悲劇性を帯びた歴史を追っていた印象でしたが、下巻は宮殿の塔や離宮などにまつわる伝説や伝承が語られます。塔の上の3人の王女様やモーロ人の財宝を巡る話など、イスラムとヨーロッパの文化が入り混じった物語たちにはとても魅了されました。それにしても、宮殿を去るに当たり、作者が確かに「ことごとく美をまとったこの世界を形見に連れて」帰って、それを見事に再現して差し出してくれているのには感嘆するばかりです。おかげで「世にも美しい」宮殿を隅々まで堪能できました。2016/06/15
seacalf
30
魔法のかかった宮殿を舞台に繰り広げられるのは、この宮殿のあらゆる場所に纏う摩訶不思議な伝承の数々。長い滞在期間中にその伝承を時にマテオやアルハンブラの住人から、時に図書館の古い年代記から紐解いてくれる。どれもこれも物語好きにはたまらない話ばかりだ。もし実際に宮殿に訪れたとしても、アーヴィングという優れた語り手が綴ってくれたこの物語がなければ、ただ漫然とその美しさに呆けていただけかもしれない。物語の力を改めて感じることができた。上下巻とも素晴らしい読書時間を約束してくれるおすすめの本。2017/04/22
拓也 ◆mOrYeBoQbw
29
紀行滞在記、歴史幻想蒐集。下巻では更に現実のアルハンブラでの滞在者、更に離宮や塔と言った舞台、幻想譚の登場人物も増え、千一夜物語の要素に加え、イスラム圏とキリスト圏が入り混じったグラナダ地方独特の風土をよく感じられる一冊になっています。現代からすると幻想譚だけじゃなく、アーヴィングの過ごした密輸商人や流浪の民が跋扈したアルハンブラも、幻想と冒険に満ち溢れたロマンの舞台に思えますね。2017/01/29
壱萬弐仟縁
17
「グラナダ市の庶民は、こぞって田園へと繰り出して、日が暮れるまで踊って遊び、それからダーロ川やヘニール川の堤をそぞろ歩いて夏至の夜を過ごす」(379頁)。庶民の楽しみを奪うような国に未来はない。自然に親しみ、自然から学ぶ。今、こうしたことができにくい時代、国になってしまったのは残念である。2013/10/13
ロッキー
15
上巻に引き続きアルハンブラ宮殿にまつわる伝説や物語が散り並べられている。地下に眠る金銀財宝、王女にまつわる伝説、幻想的な世界はアラビアンナイトの雰囲気が漂う。いつかグラナダを訪れてみたい。2012/03/29