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岩波文庫
若い芸術家の肖像

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  • サイズ 文庫判/ページ数 499p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003225523
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

若さゆえの道化ぶりを随所で演じてみせる主人公。ジョイスは一人の若者の成長過程を、幼年期から青年期にいたる感情と意識の移ろいに合わせ、巧みに文体をあやつって描いた。閉塞状況からの脱却と芸術家としての出発―この作品には時として音楽が流れ、『ユリシーズ』等につながる喜劇的精神が息づいている。新訳。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

66
ジーン・ウルフと並び、流れる時間と異にする意識の流れをも描き切る20世紀小説の立役者とも言われるジョイスの瑞々しい青春サーガ。幼児期ならではのリズム感と表現が炸裂した第一章を読んで「確かにジョイスが訳者泣かせと言われる理由が分かるわ・・・」と思ってしまいました。道化る主人公って太宰作品にもいましたが、太宰は自覚的に道化であることを選ぶのに対し、ジョイスのは無自覚なので自然。だからこその喜劇性と同時に太宰では自己への葛藤に終始するしかなかったのにアイルランド社会への葛藤と自立をも描きだすことに成功した。2015/09/18

のっち♬

50
「現実の世界からは何一つ彼に働きかけてこない、何一つ語りかけてこない、聞こえるのはただ心の底で猛り狂う叫びのこだまだけ」カトリック信仰をすてて文学を志すディーダラス。著者がモデルになった彼の青春までの生い立ちを通して、その教養的要素や自伝的要素、そして魂の自由と力から精妙にして不滅なものを想像せんとする思惟が描かれている。著者ならではの重厚にして緻密極まりない網目状のモチーフに圧倒される。知性により真理、想像力により美を把握せんと魂は彷徨う。「僕が恐ろしいと思うものの背後には悪意に満ちたものが潜んでいる」2018/08/29

燃えつきた棒

42
#22Ulysses この小説は、ジョイスの生い立ちとアイルランド出奔前夜までが描かれているものと読めるだろうし、僕もそう読んだ。 もちろん、小説だから書かれているとおりではないとしても、主人公のスティーブンをジョイスの思いを体現している存在として読んだ。/ 【ーーぐうたらで、なまけぐせのついた、のらくらものめ!と生徒監は叫んだ。眼鏡をこわした、だと!生徒がよくやる小細工だ!さあ、さっさと手を出すんだ! スティーブンは目をつむり、ふるえる片手を、てのひらを上にしてまえにさしだした。2022/07/13

chanvesa

40
思春期のことを書いてある本を読むのはものすごく苦々しい。何かにせっつかれるような焦燥感や、何もわかっていないのにわかったような気になっていた時期を思い出させて、嫌な気分になる。そして説教の場面による改心、信仰への懐疑にせよ、全くわからない。こうなんだろうかと言うぼんやりとした推定はできたとしても、共感あるいは疑問がわくような考えの対象にならない(なることができない)。こんな理解の浅さだから、ジョイスがたぶん張り巡らしているだろう言葉の網目は、するすると通過してしまった。何もわからなかったのだ。2018/03/12

zirou1984

33
『ユリシーズ』や『フェネガンズ・ウェイク』が強烈な印象を持つジョイスだが、本作はスティーブンの成長過程を描いた19世紀的教養小説としての体裁を成している。ピカソもそうであったが、伝統を更新する者はまず伝統的技法を完成させてしまうものだ。その上で文体の変化によって成長過程を表したり、主観客観を交差させる手法は次の時代の萌芽を感じさせる。スコラ哲学を踏まえた情熱的な芸術談義は圧巻だが、これを喜劇とするならそれはアイルランドの歴史に対する痛烈なアイロニーと化し、ジョイスの故郷に対する愛憎一体の感情を表現する。2013/07/16

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