出版社内容情報
上掲「幻想を追う女 他5篇」の姉妹編.運命的な人生の惨劇あり,ユーモアあり,迷信を主題とする物語あり,生の皮肉あり,恋愛あり,悲惨きわまりない事件あり.ハーディの傑出した筆力を遺憾なく発揮したこれら短篇は,読者を魅了せずにはおかないだろう.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
13
「野心家2人の悲劇」のラストに漂う全てが一つの事実によって徒労だったと気づくシーンが胸に迫ります。表題作は隠された事実と現実の残酷なまでの采配との交わり方に震えます。「市の人々」の燃え上がる情熱が次第に燻っていってしまったような無常観も印象的です。2012/11/08
きりぱい
4
ハーディの短篇のなかでも傑作の6編らしく、面白くないわけではないのだけど、どれもどこか好きになれない。最後の「市の人々」は、冷えた結婚生活に嫌気がさし、過去に別れた女性への想いを募らせる恋愛ものなのだけど、いくつか変化を越えて積年の想いがどうなるのか、その結末には、ほーそうきたか、と。そこだけは何とも言えない皮肉な悲哀が逆によかった。全然違うけれど、ちょっと思い出したのが、王女に恋をしてバルコニー下で待ち、99日目に去った男のエピソード。2011/03/03