出版社内容情報
野心と良心の悲劇であり,また罪とその報いとの悲劇である.妖女の暗示にかかり,残忍な妻の野心にそそのかされて王ダンカンを殺し僣主となったマクベスは,今度は失われることへの不安と良心的苦悩に責められ,ついに悲壮な最期をとげる.古典的な戯曲構成,鋭い性格描写,すぐれた修辞において作者の天分を遺憾なく示す.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイク
142
黒沢明の「蜘蛛巣城」はマクベスを日本の戦国時代を背景にした映画と聞く。スコットランド王ダンカンの部下で戦に勝利し3人の魔女と出会った。魔女はマクベスはコーダーの領主となり、やがて王になると予言した。予言の通りコーダーの領主となり、やがて王になるであろうと思った。ダンカン王はあるときマクベスの城に宿泊した。このときマクベスは妻と共謀して王を暗殺した。マクベスは予言の通り国王となったが、やがて妻は夢遊病に冒され死ぬ。マクベスも殺されるというストーリーだ。力ある者は権力に憧れ同時に権力により滅んでいくのである。2016/09/11
こばまり
59
積年積読を解消。マクベスってこういう話だったのか。スコットランドの話だったのか。有史以来女はそそのかし、男はそそのかされる生き物か。それがうまくいったらあげまんか。木下順二は夕鶴の人だ。気付き多く脳が活性化されるひとときだった。2017/02/24
藤月はな(灯れ松明の火)
32
再読です。魔女の予言が悲劇を生み出しますが欲に駆られて良心を殺したマクベス夫人が凄まじいです。最初は主殺しを躊躇い、慄いていたマクベスも妻の言葉に唆され、亡霊に付き纏われ、己の悪心を象徴する幻影に誘惑されて悪徳の狂気に陥っていく描写が素晴らしいです。しかし、マクベス夫人も結局は悪女に徹しきらなかったことには個人的にはがっかりしました。再読するとこの本の台詞が後世に現れた本たちに多大な影響を与えたことに驚きます。2011/12/13
tokko
26
物語自体は(わりと)単純なんだけれど、マクベスの焦り、不安が狂気へと導かれてゆくその過程がすごくいい。「マクベスが王となる」という魔女の言葉が真実ならば、「バンクォーの子孫が王となる」という言葉も現実となるはず…この信じたいけれど信じたくない魔女の言葉が呪いとなってマクベスを苦しめていく。ダンカン王を殺して王になったことで心の安らぎを失い、帝王切開で生まれたマクダフを女から生まれた男でないと悟る…まるで死の中に安らぎを求めるかのように。四大悲劇の中では僕は1番好きだなぁ。2016/12/23
shinano
26
芝居での科白(独白や傍白も)であるから言葉が吟味され選ばれている。特に詩的いいまわしが多く比喩修飾的である。こういうところで独白する人物の性格表現となるのであろう。マクベスもその妻も精神破綻となっていくところに、犯した罪業の意識無意識に関わりなく性善説的な人間の悲劇ということなのであろうか。わたしには、暗殺されたダンカン王と罪をきせられた衛兵2人がだれよりも悲劇であると素直に思う。「女から生れた奴には決してやられない」マクベスが帝王切開で生れた男にやられたことにどうにもすっきりしないです、沙翁さん。2010/07/24