出版社内容情報
弟の武松は身の丈8尺の堂々たる偉丈夫.強い酒をたらふく飲んで,景陽岡の名うての人食い虎を素手でやっつけ大評判に.兄の武大は背丈5尺,気が弱くて真面目な男,ところが兄嫁は海千山千の美女.さてどうなることやら.(全10冊)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かごむし
19
こういう物語なので、殺人はたくさんあるのだけど、小市民的な日常というものが、くどくど語らない形で語り尽くされているので、事件が物語上の記号にならずに、身近な実感となる。ある豪傑が女性を殺害したシーンは、記述はあっさりとしているのだけど、凄惨さに目をそむけてしばらく続きが読めなかった。その豪傑は、一人殺して、どうも何かがはじけたようで、仇のある相手の関係者を皆殺しにしたり、彼に直接害を加えてない相手を殺したり、他にも殺そうとしたり。義に篤いよい男だったのに、もはやただの殺人鬼じゃないのといやな気分になった。2020/10/28
R
12
天傷星・行者の武松の話が主でありました。虎殺しから、実の兄の仇をとるという話に至り、そこから逃亡と、まぁ大変な歩みだったわけだけども、今まで読んだ中で、義侠について納得できる敵討ちだったように思いました。もっともやりすぎだろうと思わなくもないのだが、こういうのを喝采したり、捕まえる側や獄卒のやからがすぐに買収されたり、義侠に免じてみたりというのが当たり前に出てくる世界観が、だんだん好きになってきた。しかし、旅人を殺して饅頭の餡にするというのが当たり前なのが強烈であります。2016/08/20
屋根裏部屋のふくろう🦉
7
前半は真面目男武大と移り気なその妻潘金蓮、金蓮を寝取ろうとする間男の西門慶の話だが、人妻の金蓮を攻略する方法を王婆が西門慶に伝える下りは実に面白く読み応えあり。ところで、ここに出てきた潘金蓮、どこかで聞いたことがある名前だと思ったが、もしや『金瓶梅』に出てくる潘金蓮じゃないかい?『水滸伝』の次に読むのが『金瓶梅』を予定しているので、楽しみが増えたと言うもの。因みに金蓮とは足元という意味らしいね。毒殺された武大の弟で豪傑の武松が兄の仇を討つ。以降後半は武松の話で、一難去ってまた一難。2020/04/30
qoop
5
如何にも小物感しかない宋江の妾殺しに対し、武松の嫂殺しは因果話としてなかなかに練られている。酔った挙句の虎退治なども豪傑の挿話として完璧で、豪傑のロールモデル的な印象を受ける。魯智深を底上げした様だが、今後ますます豪傑インフレが起こらないかと心配になるほど。武末のエピソードはもともと独立した物語だったとも聞くが、複数の物語を含み込んで成立する過程は如何にもだな。これだけの活躍を見せていきなり姿を見せなくなるのも分かる。これだけで、近代的な物語ではないと察せられる。2020/03/09
syaori
4
武松が出てきて「金瓶梅」な展開になった巻でした。武十回というのですね。初めて知りました。王婆が西門慶に、金蓮に気があるかどうか確かめるための策を教える場面は金瓶梅独自のものかと思っていたので、ここでまた読めるとは思っていませんでした。鴛鴦楼は八犬伝の対牛楼チックだわと思っていたら、やはり馬琴が翻案したところのようでした。ところで中国の古典の翻訳だと女の人が「おたんちん」とかめったに使わない罵倒語を使っていて面白いです。ヨーロッパ系の翻訳だと古くてもそんな言葉にはならないのに不思議です。2015/10/14