出版社内容情報
「生」につぐ第2の長篇で,後の「縁」とともに自伝的な3部作をなす.「生」の老母の死後における3人兄弟の生活,特に作者自身でもある次男の小説家勤の家庭を中心にどこにでもある平凡な小市民生活の中に映る人生流転の姿が描かれる.「平面描写」の技法を試みた作者円熟期の作品として見逃すことができない.解説=吉田精一
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シンドバッド
5
高2年時の感想は『平面描写が云々される作品であるが、正直な所、おもしろくない。漱石或いは直哉とは比較にならない。直哉には暖かさがあり、漱石には厳しさがある。そして、花袋には何があるか、何も感じない。同じ自然主義文学であっても、藤村は一流と云えようが、秋声、花袋はおとると云わねばなるまい。藤村にしても啄木が指摘した点はまぬがれ得ないものと考える。明治文壇の後期に於てもやはり、漱石の位置は動かし難がたいものと考える。』とある。約50年前の自分自身が懐かしい反面大変狭い観点であったと思う。