内容説明
ホスト(宿主)の体を棲み処とするパラサイト(寄生生物)は、生存の根幹をホストに依存する弱々しい存在だ。そんな彼らの中に、自分や子孫の生存にとって有利になるように、ホストの行動を操るものが進化してきた。ホストをゾンビ化して操る能力をもったパラサイトたちの精妙な生態を紹介。
目次
第1章 ゾンビアリは真昼に死ぬ―菌類と動物の攻防(物語の中の寄生キノコ;中世の麦角中毒 ほか)
第2章 カマドウマの入水自殺・カワムツの奇行―パラサイトがつなぐ生態系(ハラビロカマキリの行列;ナゾの多いハリガネムシ ほか)
第3章 体の中の“エイリアン”―ホストをゾンビ化する捕食寄生者(ミツバチはなぜ消えるのか;セイヨウミツバチのパラサイト ほか)
第4章 人はパラサイトに操られるのか―原生生物トキソプラズマとネコと人類(農耕の始まりとネコの拡散;人類の3割が感染するパラサイト ほか)
著者等紹介
小澤祥司[オザワショウジ]
環境ジャーナリスト。1956年静岡県生まれ。東京大学農学部卒業。主に生物多様性、再生可能エネルギー、持続可能な社会をテーマに執筆活動。以前から福島県飯舘村の村づくりに関わってきたことから、福島原発事故直後から村の放射能汚染調査、村民支援活動に取り組む。飯舘村放射能エコロジー研究会共同世話人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
83
パラサイトとは、他の生物の体内または体表を生活の場とする生き物。自然界に多く存在し知られているものでは冬虫夏草やハリガネムシなど。ハリガネムシに寄生されたカマキリは自分の意思ではなくパラサイトに誘導され水に入る、これがもし人間だったらゾッとする。ゾンビ・パラサイトという言葉はそこから来ているそうだ。ミツバチが消える原因、寄生する菌類とアルツハイマーの関係、ネコからの感染症、寄生されたネズミがネコを恐れなくなるケース(もうトムとジュリーの世界!)など難しい専門用語も少なく興味深く読むことが出来た。図書館本。2017/01/08
★YUKA★
42
どの様にして宿主をコントロールしているのか、とても不思議です。 ハリガネムシ、ただただ気持ち悪いとしか思っていなかったのですが、生態系のバランスを保っているのですね。でも気持ち悪いです( ノД`) 4章のトキソプラズマも興味深かったです。私たち人間ももしかしたらもうコントロールされているかも…?2017/10/24
まりお
35
寄生虫の話。猫とトキソプラズマ、そして人間の話題は勿論ある。私のお気に入りはカマドウマとハリガネムシの話。ハリガネムシがカマドウマに寄生すると、カマドウマが入水自殺する。カマドウマからしてみれば厄介極まりない事だが、生態系全体を見ると大きな意味を持つ。カマドウマの自殺が魚に栄養を与え、河川の生態を良くする。不思議な関係だ。2019/08/11
寝猫
21
うう… 下手なホラーより凄まじい。 こういう生き方をする生き物が確かにいるのだな 芽殖孤虫の事をテレビ番組で見た時もうわぁ〜となりましたが、怖さが増してしまいました。 虫の世界だけでなく菌やウイルスも自然はしたたかで深いなぁ。人間は意外と危うい塔の中で繁栄している気がしてきました。 操る仕組みが判かったら面白いだろうな。2021/07/22
鯖
18
つかみは南の島でキノコ人間と化す映画「マタンゴ」。菌類に支配され、ふらふらさまよい歩き、葉脈に「最期の一噛み」した姿勢のまま冬虫夏草と化すゾンビアリは4800万年前の化石からも見つかっている。ハリガネムシは寄生したカマドウマを操り、水に飛び込ませて脱する際、死骸となったカマドウマはイワナに補食されるので(なんとイワナの栄養分の6割が自殺したカマドウマだとか)、他の水生昆虫の増加につながり、結果として生態系の保護となる。ギンメッケゴミグモは寄生バチの蛹を守るため、通常の巣の30倍の硬度でゆりかごを作る。2018/01/08