思考のフロンティア<br> 暴力

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思考のフロンティア
暴力

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  • サイズ B6判/ページ数 139p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000270090
  • NDC分類 361.4
  • Cコード C0310

内容説明

暴力の世紀としての20世紀の経験は、私たちに何をもたらしたのか。その歴史に浮かび上がるのは、近代そのものに内在する暴力の姿である。私たちの文明に潜在する暴力は、グローバル化が進行するなかで、近代世界システムを変容させながら世界を席捲している。理性に刻み込まれた、近代の逆説としての暴力を根源的に問いなおす。

目次

1 暴力の政治学―戦争と政治をめぐる思考(生の政治と死の政治―近代国民国家と暴力;限定戦争と絶対戦争―主権国家体系と暴力;脱領域化と再領域化―グローバル化と暴力)
2 暴力の弁証法―暴力の臨界をめぐる思考(法の支配と法の暴力―秩序と暴力の弁証法;自己保存と自己融解―理性と暴力の弁証法;敵対関係と闘技関係―友愛と敵対の弁証法)
3 基本文献案内

著者等紹介

上野成利[ウエノナリトシ]
1963年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。京都大学人文科学研究所助手を経て、神戸大学国際文化学部助教授。政治思想・社会思想史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

白義

8
統治、管理としての暴力と、破壊としての暴力。二つの暴力概念を焦点にシュミット、ベンヤミン、アレントといった思想家たちの著作を精緻に読み解き現代の暴力、その本性に迫っている。特にアドルノ論が力作で、他者の模倣、ミメーシスの中に自己保存の欲望と自己融解の欲望両方を見、そこから人間が暴力に根本的に規定されているという。暴力の批判の企てに、シュミットの読み替えとしてのムフの「闘技」と、デリダとハーバーマスの「歓待」を唱えるところで結論。暴力について考えるいい出発点になる本だ2011/10/29

politics

5
前半部ではゲヴァルトとしての暴力の基盤となる国民国家体系の考察が行われ、後半部では暴力自体についてゲヴァルト、ヴァイオレンスの二つの側面をベンヤミンやアドルノらの論考を参考に考察がなされている。前半部は多少知識があるため少々一面的に過ぎると感じる部分もあったが、後半部ではベンヤミンらフランクフルト学派が多く引用されており、大変勉強になった。現実世界で「暴力」にどのように対処していくか、本書の議論をそのまま適用することは困難だが、参考になることは間違いないだろう。2021/07/07

D.Okada

5
「20世紀は暴力の世紀である」。本書はこのアーレントの有名な言葉で始まる。近代的政治現象(主権国家体系や戦争)において暴力がいかに作動してきたか、近代性に内在する暴力と20世紀以降のその変容を追いながら概観する第1部の核心は、言うなれば20世紀はクラウゼヴィッツの命題「戦争とは別の手段による政治の継続」が顛倒したものであった。第2部は一転してベンヤミンの法措定的暴力と法維持的暴力、ハーバーマスの寛容、デリダの歓待などを手がかりに、理論的に暴力批判の論理をいかに構想するか思考を試みる内容で、とても深い。2013/01/01

d0g_ville

3
著者は、フランクフルト学派が専門であるらしく、「暴力」という概念について、殊更ホルクハイマー/アドルノや、ベンヤミンらの思想を通じて語る。「暴力」概念が非常に多義的であることは言を俟たないがゆえに、この視点を中心にして語ることは適切かもしれない。個人的には、晦渋な文体として(悪)名高いベンヤミンの『暴力批判論』(又は、『暴力の批判的検討』)の内容を鮮やかに紐解く著者の業がとても印象深かった。2013/12/25

КИТАРУ МУРАКАМУ

3
理論的な視座から<暴力>に対して焦点を当てることは、確かに必要だけど、どこか歯痒い感覚を引きずっている。暴力の渦中にいる者と暴力から疎外された者、この表現は誤解を生むかもしれないが、少なくとも、暴力を主体的かつ客観的に語るという行為が禁忌として作用するのではないだろうかと。確かに暴力の主体者が暴力を放棄し、己の行為にまさざしを向けさせるのは有為ではあるのかもしれない、だがそれは倫理的、あるいはそれを包括したシステムに帰着するのではないか。暴力に対する批判はその手をするりと抜け落ちていくあざとさに暴力の真意2011/01/06

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