出版社内容情報
《私》とは何か.脳の私と身体の私,そして心としての私は,同一なのか別物なのか.《私》の存在をめぐる独自な思索を展開する著者が,SF的思考実験を通し,仮設されたセミナーのスタイルで描き出す,《私》の比類ない性格と位相.
内容説明
デカルトのコギトは、主観性の哲学にも、独我論にも結びつかない。すなわち自己同一性の閉域を構成しない。“私”の存在にはらまれた存在論的・意味論的含意を、いくつかの思考実験を通して精査してみよう。
目次
序章 火星に行った私は私か
第1章 人称の秘密―デカルト『省察』からの逸脱的セミナー
第2章 私的規則の本質―Dのレポート
第3章 「転校生とブラック・ジャック」―本文の提示と、それをめぐる短いセミナー
第4章 なぜぼくは存在するのか―Eのレポート
第5章 存在と持続―パーフィットの『理由と人格』第三部をめぐる継続的セミナー
第6章 中心化された可能世界―Fのレポート
第7章 談話室―哲学的議論のための要諦
第8章 記憶の変化は記憶できない―Gのレポート
終章 解釈学・系譜学・考古学
著者等紹介
永井均[ナガイヒトシ]
1951年生まれ。専攻、哲学・倫理学。慶応義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得。現在、千葉大学文学部教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
42
「哲おじさんと学くん」で理解が難しかったところもあり、再読。今回は登場人物の学生たちの論を、それぞれの特徴を個別に、ある程度理解できた。再読して、「哲おじさんと学くん」にあることのほとんどが、基礎的な形で出てくることも、改めてわかった。Eくんのように、答えがほしいので哲学をする人も多いだろう。私もおそらくEくんと同じ動機から読み始めたのだと思う。2018/03/18
へくとぱすかる
41
文庫でかって登録した本を再読。内容とは関係ないが、造本や印刷など、リーダビリティーは断然単行本の方がよい。永井分析哲学の基礎ともいえる本。私とは? と、一度はその不思議を考えたことのある人には、まさに座右の書。ただし、述べられているように、書かれていることに賛成・反対するための本ではない。自分で思考を深めるために、考え方を例示してくれる本である。2017/11/07
Kousuke Tanaka
2
本書には「哲学的」という言葉で評価される、とある主張が幾度も繰り返される。しかし、哲学とは永井均が定めるだけのものだろうか?内容は、まさに永井先生の講義に出ていた時代、リアルタイムに聞いていた内容。パーフィット。懐かしい。ある意味、永井先生の哲学に触れるには好著である。ただし、冒頭の理由もあり、読みづらい。2013/01/07
ゆうき
2
現時点での永井均最高傑作。だと思う。2010/04/27
じょに
2
パーフィットをネタに哲学してみようという本。チャーマーズにせよ西田にせよ、それを使ってさらに哲学しよう、ってのが永井さんの魅力。登場の人物が沢山登場することによって、やっぱこうも思うよね素朴にーっていうのが味わえる。結構むずい。2009/02/12