出版社内容情報
古代オリエントに誕生し,人間の歴史にはかり知れない影響をおよぼした壮大な物語の殿堂が,現代の日本語によみがえる.宇宙の創成,民族千年の興亡,終末観に閉ざされた社会と文化,愛のよろこびに震える魂の歌-ここにはすべてがある.旧約聖書学の進展を踏まえ,最前線に立つ気鋭の訳者陣が渾身の力で取り組む,画期的な新訳.
目次
サムエル記(上)
サムエル記(下)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
71
タイトルこそサムエル記ですが、サムエルの物語そのものではなく、預言者サムエルからイスラエル初代の王サウル、後を継いだダビデの物語と言うべきでした。王政が生まれると共に権力をめぐるドラマが繰り広げられていくのは、それまでの聖書の時代からは考えられないことです。後半はほぼダビデによる王国と反乱の物語と言うべきでした。ここから様々な王国の歴史が始まるプロローグとして読むと面白くはあるのですが。2017/02/25
きゃんたか
17
神の油注ぎを受けたサウルは初代の王となるが、自己実現に固執する下心を預言者に暴かれる。とりわけサウルの言い逃れと勇士ダビデに妬み憎しむ醜態は痛ましい。次いで王位を賜ったダビデは、当初こそ隣国に対する連戦連勝、前王サウルに対する敬虔が麗しいが、人妻バトシェバとの姦通と連なる夫ウリヤの謀殺以後は内乱に次ぐ内乱で人の弱さを徹底的に曝け出す。義しい者は一人もいないという聖書のテーマが通奏低音の如く流れる本書は、語らずに語る事実に見え隠れする神の慈しみと一罪人ダビデに注がれる神の憐れみが味わい深い余韻を残す。2017/11/04
讃壽鐵朗
3
戦記として読むと面白い2015/08/14
Viola
2
有名な巨人ゴリアテとの戦いを含む、サムエルからダビデへと続く物語。選ばれた王サウルが欲にまみれ失脚していくさま、完璧な王に思えたダビデの犯す罪。本文から読み取れないところを解説によって助けられ、深く読むことができた。2018/09/24
しいかあ
1
士師にして預言者のサムエルから、イスラエル最初の王サウルと次代の王ダビデに至るまでの物語。というか、ヤハウェがうっかり王政の導入にOK出してしまったがゆえに起こる権力をめぐる凄惨な争いの物語と読めなくもない。実際、サムエル記の大半は反乱を心配する王の姿と、実際に反乱を起こした者の記述に費やされている。要はまだそんなに勢力も大きくなかったであろうイスラエルの権力基盤なんてこの程度、という話なのだけれど。ただ、その中でもサウルの物語は極めて劇的であり、その晩年はシェイクスピアの悲劇をも彷彿とさせる。2015/01/15