出版社内容情報
核超大国による隣国への全面的侵略という悪夢が現実となってしまった。戦争の惨禍が積み重なる現状に対し、私たちは何をすべきなのか。この事態をどう理解し、どう声をあげるのか。問題の歴史的文脈をさぐり、この戦争がもたらすであろうグローバルな影響を多角的に掘り下げつつ、抵抗の国際的連帯の可能性を追求する。
目次
それでも向き合うために―単純化を避けながら(師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家))
小柄なサイコパス男の大きな影(島田雅彦(小説家))
私の人生に戦争があるとは―キエフのある一家のいま(吉田由布子(市民運動家))
1 今、何が起こっているのか
2 グローバルな危機の実相
3 ヒューマニズムという原点へ
1 ~ 1件/全1件
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稲岡慶郎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベイス
86
ウクライナ侵攻から2年。奈倉さん繋がりで遅まきながらロシアの政治・社会学者シュリマンの講演を読む。多くの人が無力感と諦めに苛まれているであろう今この時、大事なのは自分が負っている責任の範囲を明確にし、必要以上に罪悪感に囚われないこと。諦めず、自分の責任の及ぶ範囲で何ができるかを考え実行すること。大変示唆に富む内容。「私たちがこれまで読んだもの書いてきたことが無駄だったとは決して思わないで。学問を精神の基盤とする人々は最も強い人々」との言葉には涙が出そうになった。この論考、今こそ多くの人に読んでほしい。2024/02/20
kaoru
84
ウクライナ侵攻で急遽発売された増刊号に専門家たちが寄稿している。「核保有国ロシアが指導者のほぼ妄想で作り上げた『国益』を目指して暴走したという出来事は、国際社会がアナーキーな闘争関係で出来ているという古典的な国際政治学的イメージが、今も変わらぬ現実である恐ろしさを改めて突きつけた」という座談会での服部倫卓氏の言葉に頷いた。起きるとは思えなかった侵攻に世界が振り回されているが、NATOの覚醒などロシアにとって有利な点はないと思うのだが。「真の当事者は…ロシアとアメリカである」とエコノミストの西谷氏が→2022/04/24
壱萬参仟縁
57
ここにきて読むべきだと思い、N図書館より。ロシア国民の世論調査結果は、ウクライナ侵攻を支持するとする者が多数(120頁帯グラフ)に改めて驚きを隠せない。。高齢者ほどその傾向があるというのは、どういうことか? 原発が戦争の標的となるというリスクは、現代令和日本にもあると改めて自覚が必要と思う。専門知識が必要とはいえ、不測の事態で避難できるのか? トランプも2年後、米国人が選ぶなら、第三次世界大戦なのか? 広島や沖縄を訪れる高校生にも本書を紹介したい。被ばく者や沖縄戦を経験している人の話を傾聴してほしい。2022/10/23
かもめ通信
18
松里公孝氏の“未完の国民、コンテスタブルな国家”は、テリーマーチンの『アファーマティヴ・アクションの帝国』との関連でなかなか興味深く、橋本伸也氏の“「紛争化させられる過去」再論”は、マルレーヌ・ラリュエル氏の『ファシズムとロシア』に通じるものが。とはいえ一番関心のあった第Ⅲ部は少々肩透かしの感が。まあそれも現時点では仕方が無いことか。2022/06/25
たばかる
16
ジジェクの項目目当てだったが、こちらでの収穫はあまりなかった。本最後の栗田祥子氏の論考が興味深い。「異なる視点ー第三世界とウクライナ危機」という題でケニア、キューバ、インド共産党などの声明を取り上げる。無論全て戦争は反対だが、ケニア→ロシアとウクライナの国境は不当に決まったものであり民族の分断があると指摘。キューバ→アメリカの国際法の二重基準の指摘。南アフリカ→イラクやアフガンと比してウクライナへの過度な注目と援護に人種差別を指摘。などそれぞれの国由来の問題点を挙げている(対して日本は...)。2022/05/13