内容説明
食をめぐる問題が多発する今こそ、原点から考えよう。私たちはなぜ、他の生物を殺め、食べ続けなければ生きてゆけないのか。食の安全を脅かしているのは、何なのか、誰なのか。気鋭の科学者による、いのちの講義。
目次
生きることと食べることの意味
狂牛病が私たちに問いかけたこと
食の安全をどう考えるか
著者等紹介
福岡伸一[フクオカシンイチ]
1959年、東京都生まれ。京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了。ロックフェラー大学およびハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授を経て、青山学院大学理工学部化学・生命科学科教授。専攻は分子生物学。著書に『プリオン説はほんとうか?』(講談社ブルーバックス、講談社出版文化賞科学出版賞受賞)、『ロハスの思考』(ソトコト新書)、『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書、サントリー学芸賞社会・風俗部門受賞、2007年新書大賞受賞)などがある。2006年、第1回科学ジャーナリスト賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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モリー
67
「生命」にとって「食」がいかに大事かは論を待ちません。しかし、ふだん私達が口にする食べ物が、安心安全を置き去りにしたもので、それを知らされずに供給され続けているものだとしたら・・・。それは現実に起きた事なのです。皆様はどう思われるでしょうか。生産者も消費者も共に経済効率を追求した結果、私たちは知らず知らずのうちに命を奪う毒を体内に取り込み続けているのかもしれません。本書は、私の食料調達時の行動指針を大きく変えました。エンゲル係数が低いことは必ずしも豊かさの証とは言えません。多少高くても安心安全が一番です。2020/07/19
とよぽん
41
命と食べることは直結している。だから、安全な食品を食べたい。そのためには、消費者も生産者も食品のプロセスを可視化しなければならない。しかし、多くの消費者は食品の価格を選択基準にしているという事実が、食のプロセスをブラックボックス化させている。安全な食品を得るためのコストを消費者は担うべきだ。安いものは安全のコストを削っていると思っていい。練り物(人工的な食材)に囲まれた現代、という言葉が強く印象に残った。結構古い(10年ぐらい前)けれども、重要なことが書いてある。2020/10/12
Sakie
20
日本の狂牛病騒ぎが2001年。この冊子が発行された2008年には、とっくに日本人は狂牛病の事を忘れ去っていたはずだ。しかし改めて経緯を知ると寒気がする。草食動物である牛の子を肉や骨の粉(動物の死骸)で育てるという発想をはじめ、問題のある人的作為の大概は金の都合だ。『狂牛病は人災の連鎖』。この類の問題は解決していないどころか増える一方。私たちの身体は動的平衡にある。摂取したものは、文字どおり血肉になる。平衡状態の乱れが病ならば、私たちは注意深く自分の身を守らなければならない。安さで選べばそれなりの体になる。2019/08/25
Nobu A
18
福岡ハカセ著書10冊目。赤系(子供、教育等)は数冊読了済みだが、本著青系(医療、福祉、法律等)は初めて。「動的平衡」や「狂牛病」は前著と被る箇所が多少あるが、タイトルの「生命と食」を改めて俯瞰する意味では悪くない。遺伝子組み換え、いや添加物さえ色々と考えさせられる。ある意味、便利になり過ぎて後戻りは出来ない気もする。あらゆるモノがグローバル化で複雑になり過ぎて原材料の調達及び製造場所の追跡は不可能に近い。食に限っては地産地消を実践したい。肥沃な土地を持つ日本、国の農業政策ももっと真剣に考えてもらわないと。2023/03/26
壱萬弐仟縁
18
生命を科学する。シェーンハイマーは、生命が絶え間のない流れにあり、その有りように「動的平衡」と命名した(10頁)。重要なことは、静的(static)ではないということであろう。このことは、経済学でも同様で可変的だと思える。ダイナミックな展開をしていくいのちの営みといえる。ES細胞は2のn乗で増えていく無個性を維持して立ち止まり、増殖だけしていくという(16頁)。改めて家畜は哀れに思える。狭い畜舎に閉じ込められ、自由ないのちを謳歌できる時期がどれほどあろうか。動物福祉の点で問題。全頭検査もTPPでどうなる?2014/02/03