作家の方法<br> カフカの迷宮―悪夢の方法

作家の方法
カフカの迷宮―悪夢の方法

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  • サイズ B6判/ページ数 227p/高さ 20X14cm
  • 商品コード 9784000035057
  • NDC分類 940.28

内容説明

謎としての現在へ、語りの迷宮を紡ぐ新しいカフカ物語。

目次

1 認識の迷宮あるいは方法としての悪夢(カオスと増殖;抽象と具象の謎)
2 「ズレ」と「笑い」の拡大装置(ゴーゴリとの結合;なぜ「小説」なのか?)
3 変身(楕円形のゴキブリ;「格闘」という関係;妹の宣告)
4 カフカ言語(「もどかしさ」とスピード;「掟」と「代理人」;不思議な「だが」)
5 万里の長城(時空間のイメージ;見えない「指導部」;「二重性」と「暗示」)
6 不可知への回路(メカニズムと「女」たち;三つの「無罪」;対話と噂の構造;未知としての過去)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Bartleby

17
後藤明生によるカフカ論。カフカの文体の“速度”という着眼が面白かった。思考に筆が追いつかない、そのズレにあの独特さが出る。また「変身」がモノローグでなく明晰な?三人称で語られることで悪夢感が増す。カフカの小説の登場人物には人格がなく関係しかないという指摘もなるほどだった。だから関係が途絶えることはすなわち死を意味する。そうした視点から変身を読んだことはなかった。2023/04/23

パオー

9
後藤明生のエッセイ風評論は三冊目だけどどれもすごく面白い。わかりやすい言葉で書かれているが、『楕円としての世界』理論で読み解かれるカフカ論やゴーゴリ論は興奮するレベル。世界は自分を中心とする円なのではなく、他者などのもうひとつの円も存在し、二つの中心を持った円は楕円になる、という理論。さらに「審判」の読解は、ミラン・クンデラのカフカ解読でいまいち分からなかった部分が鮮明になった。カフカは人物の所作を「身振り」として、とくに「格闘」の身振りとして書く。男女の絡み合いさえも『反美的』な格闘の身振りとして書く。2014/01/16

フリウリ

7
わたしたちは、原因不明で正体不明の「迷宮」に迷い込んでいて、その迷宮の中でしか生きられない運命にある。そしてわたしたちが生きるということは、その迷宮に「所属」することなのである。このような、原因不明の運命としての迷宮、および迷宮への所属を、カフカは、「原因不明の悪夢の方法」で描いたのだ、と後藤は言います。ところで、「所属する」とは、「わたしは常に他者との関係のなかで生きている」ということです。これは、なかなかに恐ろしいことであると思います。立ち止まるところの多い本です。92023/05/19

ハイザワ

5
全体の見えない「世界」に対置される部分としての「個人」。その個人の内部では、分裂した二つの点が付かず離れずの関係で牽制し合っている。二重の楕円関係の下で個人は、最終的な決定が無限の伝達構造により繰り述べられる迷宮の中で徒労な闘いを演じることとなる……。後藤明生の読み巧者ぶりが冴え渡る一冊。しかし一番不思議だったのは、「ヘンシン」と叫ぶヒーローが「仮面ライダー」ではなく「ウルトラマン」と書かれているところだった。本筋には全く関係ないが、やけに気になる(しかも「テレビ漫画」という時代を感じる表現付き!)。2019/01/04

Tonex

5
後藤明生のカフカ論。『変身』に関連して、43頁に《「変身」という言葉が[……]ご存知テレビ漫画『ウルトラマン』の「変身術」の呪文「ヘンシン!」となり》と書いてあり、ウルトラマンと仮面ライダーの区別がついてないことに驚いたが、後藤明生にとって記憶とは常に変形されているものらしい。カフカのフレーズも知識として記憶しておらず、《ゴーゴリなり、ドストエフスキーなりと、あるいはもっと他の何ものかと、それこそアミダクジ式に結合したカフカが、わたしの想起するところのカフカであります。》(162頁)といった具合。続く→2015/12/27

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