目次
1(トレース;トーン;プリズム ほか)
2(きのふの今;手;兎の夢 ほか)
3(私;35°29′09.6″N139°42′02.6″E;匚 ほか)
著者等紹介
鴇田智哉[トキタトモヤ]
1969年木更津に生まれる。1996年俳句結社「魚座」(今井杏太郎主宰)にて俳句を始める。2001年五十句作品にて俳句研究賞受賞。2005年句集『こゑふたつ』(木の山文庫)、同句集にて俳人協会新人賞受賞。2006年「魚座」終刊。2007年俳句結社「雲」(鳥居三朗主宰)入会、編集長。2013年「雲」退会。2015年同句集にて田中裕明賞受賞、同人誌「オルガン」創刊参加(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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柊渚
21
「いうれいは給水塔をみて育つ」 「冬凪へことごとくあく車輛の扉」 「立ちくらみくる白息の海の駅」 唇からほろりと飛び出したとりとめのない言葉たち、そのひとつひとつを掬いあげて集めたどこか不思議さ漂う句集。 2021/09/03
かふ
17
NHK俳句の選者なので、どんなもんかと読んでみた。難しい。草や花がそこに生えているような俳句を作りたいという。なんか有機的なものではなく、無機的な建造物のような美意識を感じてしまう。それはすべて14文字で揃えられているから、それが規則正しく並んでいる。促音とか拗音もきっちり揃えている。一番面面白いと思ったのはファミレスの連句。わかり易いといえばわかりやすいのかも。あとうTwitter上で公開された「乱父」シリーズ。文字数とか整っていなくて季語がわからなかったりするけど乱舞する言葉は好きだ。2021/05/18
あなた
2
「丘を見てきたと電池を取り換へる/鴇田智哉」。鴇田俳句の中で丘と電池はふつーにつながっている。電池を取り換えることと丘を見ることはシステムとしても価値としても何も変わらない。価値観のプレーンでまっさらな白い風景の中誰かが誰かにものを言う。いきる、しぬ、あいする、あいされる、でなく。2021/11/11
豆ぐみ
2
2020年11月、素粒社刊。「オルガン」同人の著者の第3句集。特に好きな句は〈まんなかに始まりのある水馬/かなかなといふ菱形のつらなれり/あたたかな木とさかさまに映る木と/毛だらけの犬を抱へる秋の人/すぢかひのつめたさ空の組み上がる/ひむかしのひもとひらめくぷらなりあ/いうれいは給水塔をみて育つ/気づかれてさやかに張りつめる子供/こはるびの粒々のパラシウトたち/しらいしは首から上を空といふ/前をゆく私が野分へとむかふ/冬凪へことごとくあく車輛の扉/すがたゑが日向ぼこうにゐて坐る/2020/12/03
kumoi
1
発想のおもしろさで勝負する句ではなく、ここにある自然や「私」と真正面から向き合った結果としての句でありながら、写実的に記号を書き連ねるだけではない温かみを感じる。私たちが信じている世界がたとえ情報に過ぎないのだとしても、実在とシミュレーションのあわいで人類としての尊厳を持ち、馬鹿みたいな継承に努力を惜しまない人間でありたいと思う。2024/03/25