内容説明
聖職者・知識階級ではなく、中世ヨーロッパの一般大衆は、死と死後の世界をどのようにイメージしていたのだろうか。一三世紀から一六世紀にかけて、煉獄の誕生をみた中世は、死後世界をめぐってさまざまな表象と物語を生み、それはペストの惨劇をくぐってさらに多様化する。現世蔑視、魂と肉体の対話、往生術、死後世界探訪譚、死の舞踏という死の文学のモチーフにおいて煉獄が果たした役割とはなんだったのか。自国語による説教、教化文学、壁画、ステンドグラス、時祷書、装飾写本などを図像とともに広く渉猟し、人々の心性に浸透してその死生観の根となった要素を掘り起こす。
目次
序章 死を生きるヨーロッパ中世
第1章 死と向きあう―現世蔑視と現世無常
第2章 死を飼いならす―煉獄の役割と死後の保険
第3章 死と対面する―いまわの際のドラマ
第4章 死後を生きる―死後世界の探訪と表象
終章 死の変容―薄く引き延ばされた死
著者等紹介
松田隆美[マツダタカミ]
1958年生まれ。専攻、イングランドを中心としたヨーロッパ中世文学。一般大衆の心性に浸透した世界観・死生観を中世写本のテクストと挿絵の両面から探求。慶應義塾大学文学研究科博士課程修了、ヨーク大学大学院博士課程修了。現在、慶應義塾大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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