内容説明
実の父を探して長崎を訪れたユナとレストラン「ネクストドア」に集う人々が織り成す絆の物語。韓国最大の文学賞、大山文学賞受賞作。
著者等紹介
クヒョソ[クヒョソ]
具孝書。1957年韓国江華島生まれ。1987年に中央日報の「新春文芸」に短編小説で当選し、作家活動を始める。1994年『栓抜きのない村』で韓国日報文学賞、2005年『塩かます』で李孝石文学賞、2006年『明斗(巫女・シャーマン)』で黄順元文学賞、2007年『かけ時計の痕』で韓戊淑文学賞、『調律‐ピアノ月印千江之曲』でホ・ギュン文学賞を、それぞれ受賞。2008年には、『長崎パパ』で大山文学賞を受賞。作家デビュー以来、読者から愛され続けてきた現代韓国を代表する作家の一人
尹英淑[ユンヨンスク]
1953年韓国生まれ。韓国の東義大学校日本文学科卒業。8年間の東京滞在後、帰国。新羅大学国際関係学科の日本語講師を勤めた。2003年から埼玉県に在住。在日詩人ぱくきょんみと韓国の文貞姫、金龍澤、安度眩、金素月、鄭浩承の詩を共訳し詩集『白い乳房黒い乳房』―地球をむすぶ72のラブ・メッセージ(2009年、ホーム社刊)に紹介される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
30
長崎に父親を捜しに来た韓国人のユナ。ユナに一方的に語る形で母親のコメントが挿入される。ユナの周りの人たちもどこかいびつな人ばかり。2018/05/01
はなすけ
14
映画のように場面が浮かんできて最後まで楽しかった。 長崎に実の父を探しにきて、料理人として働く韓国人のユナ。 ユナの同僚や友人との距離感がいい。若いながらも自分の問題はちゃんと自分で引き受けてる彼女の強さが好きだ。 人は皆、内に嵐を抱えている。生き続けるために日々闘っている。 仕事や職場、時々ウザいなあと思う友人、マイペースな同僚、人には理解されない理由や目標の全てが闘いの支えになっている。 本当にけなげな生き物だよなあ、人間て。読後に凸凹した自分も他人も少し好きになれる気がした。2018/04/11
有無(ari-nashi)
10
昔外国人を閉じ込めていた出島がある長崎。家出娘ユナの父親探し、出生についての母からのメール、ユナが働くレストランの個性的なメンバーたちの話など。大きな事件は無く淡々と日常が進むが、所々で朝鮮戦争、同和地区、在日朝鮮人、アイヌなど過去だと思っていたことが亡霊のように顔をのぞかせ、人々を所属分けしようとする。父親(アイデンティティ)を探したり、美化したり、拒絶したり。そして所属不明なものたちが新しい家族になる。話が飛び飛びになり流れが少し解り難いところだけが難点。2015/01/30
忍者
10
ラジオで韓国文学が面白という話を聴いた直後に本屋で見つけ、自分も長崎に住んでるし、縁を感じて買った一冊。ほぼ、主人公の女の子、ユナの視点で描かれていますが、劇中では、ユナが何かキーワードに引っ掛かると、ユナの回想場面やユナのお母さんの話に変わる、という場面が頻繁にあり、物語のパーツがバラバラになっている気がして、知らない世界に放りこまれた感覚でした。物語の中盤まで理解できたことは、地名のみという具合なんですが、ストーリーは引き込まれるように面白いです。特に長崎在住の人は、他県の人とは違う楽しみがありました2013/10/08
みみずく
9
父親を探すため韓国からやってきたユナの物語。長崎で暮らすうちに、本当は何をしにここにやって来たのかを自問し始める。そして自分の所属している国や社会や家族を頼りにするのではなく、「ここにいるわたし」を起点として人とつながっていこうと決意する。でもユナは、最初からいつも隣にいるミル姉さんやレストランの仲間たちを大事にしていた。決意する前からユナはわかっていたのだと思う。2013/08/08