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内容説明
ヤン・ファン・エイクが描いた“アルノルフィーニ夫妻の肖像”は、世界で最も有名な美術作品のひとつであり、画集やポスター、絵はがきなどを通じてこれまでに数多くの複製がつくられてきた。だが、この作品はいったい何をあらわしているのだろうか?よりつきつめて言うならば、新婚夫婦の寝室という最もプライベートな空間に私たちが踏み込むとき、いったい、どのような「神秘」が待ちうけているのだろうか?私たちは、この絵の細部をひとつひとつ眺め、思いがけない発見をしてはとまどう。ファン・エイクという画家は、徹底的な細密描写を重ねることで驚異的な写実主義に到達した。夫婦の寝室という「親密」な場面をつつましく描きながら、画家はそこに普遍的な「小宇宙」を凝縮している。また巧みな光の描写によって、私たちに、あたかもこの寝室に招待されているかのように感じさせる。そして、背後の壁に描かれた凸面鏡(この驚くべき仕掛け!)は、そこに映し出された画中の空間を拡張するだけでなく、夫妻のほかにさらに2人の人物が存在することをも示唆する。その2人は絵を観ている私たちかもしれない―。このようにして私たちは、作品の鑑賞者から画中の登場人物となり、時間の止まったこの寝室へと神秘の力で運び込まれるのである。そして最後に、最も重要な問題が私たちの前に立ちふさがる。ここに描かれた人物は誰なのだろうか?それは、ほんとうにアルノルフィーニ夫妻なのだろうか?
目次
わたしたちに必要な最後のもの
ある傑作の国際的な遍歴
謎の「エルノール・ル・フィン」―アルノルフィーニか、愚かな寝取られ男か
室内の世界
ファン・エイクは、あらゆることを考えた。わたしたちのことも含めて。
図版:“アルノルフィーニ夫妻の肖像”(全図)
部分解説
年譜:ファン・エイクの生涯とその時代
著者等紹介
ズッフィ,ステファノ[ズッフィ,ステファノ] [Zuffi,Stefano]
1961年、ミラノ生まれ。美術史家。ミラノ大学卒業後、同大学大学院で中世・近代美術史を、ミラノ工科大学で博物館学を学ぶ。モンダドーリ・エレクタ(Mondadori Electa)社の編集顧問を経て、現在、活発な執筆活動を行っている
千速敏男[チハヤトシオ]
1958年生まれ。成安造形大学芸術学部教授。成城大学大学院文学研究科博士課程満期退学(美学美術史専攻)。専門は17世紀オランダの絵画理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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