内容説明
16世紀、全国を巡って記録を残した学者たちや地図製作者。17世紀、全イングランドを巡る旅をした女性。18世紀、理想の風景を求めて各地を旅した観光客。旅を通じてイギリスを知ることになった、お国意識の始まり。
目次
第1章 歴史を探る旅―好古史家のイングランド発見(ジョン・リーランド;リーランドの後継者たち)
第2章 イギリスを測る旅―クリストファ・サクストン(地図の「効用」;サクストンの生涯)
第3章 旅する女性―シリア・ファインズの「大旅行」(シリアの旅;新しいもの好き ほか)
第4章 近世イギリス旅事情(道と交通手段;旅の難儀 ほか)
第5章 風景を求める旅―景観とアイデンティティ(イギリス風景美の発見;好古史家の旅・文学趣味の旅 ほか)
著者等紹介
指昭博[サシアキヒロ]
1957年大阪府に生まれる。大阪大学大学院文学研究科博士課程(西洋史学専攻)単位取得満期退学。博士(文学)。大阪大学文学部助手、追手門学院大学文学部助教授などを経て、神戸市外国語大学外国語学部教授。専門は、近世イギリス史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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SQT
2
研究の参考文献として。マスツーリズム以前にイギリスでどのような形の旅が行われてきたか。だいたい国策事業じゃないと国内でもお金や荷物が多かったりでうまくいかなかった。事業として測量だったり国王のための史料集めだったり。レアケースとしてシリア・ファインズという女性が国内を馬で一人旅(とは言ってもお供を連れている。シリアも一応は貴族だった)したのがあり、追い剥ぎとかの危険もあったとはいえ旅がまったく不可能だったというわけではなかった。2017/06/29
timeturner
2
16世紀から18世紀にかけてのイギリス国内の旅をユニークな視点から考察していて興味深い。馬の背に揺られ、女だけでイギリス中を旅して回った貴族女性シリア・ファインズの存在にはびっくり&感動。2013/11/28
ひかぷら
0
イギリスにおいて16世紀〜交通事情の改善によって旅の意義が徐々に娯楽性を帯びてくる過程が興味深かった。東海道の整備によって庶民の間でお伊勢参りが流行した事例と似ており、旅行の意義の変遷の仕方は本質的にどの国でも変わらないのだと感じられた。 また、17-18世紀のジェントルマンがピクチャレスクな光景を求めて旅をしたり、ピクチャレスクでない風景にフィルターをかけて強引に絵の風景に近付けようとする行動は、現代でも観光地で見られる光景であり、大衆の感性の進歩のなさを感じられ笑ってしまった。2023/08/06