内容説明
ロシアの口承文芸「泣き歌」に投影された民衆の習俗慣習、世界観を、その詩行を通して読み解く。
目次
第1章 泣き歌とは
第2章 泣き女フェドソーヴァ
第3章 葬礼の泣き歌
第4章 婚礼の泣き歌
第5章 兵役送りの泣き歌
著者等紹介
中堀正洋[ナカホリマサヒロ]
1973年京都府生まれ。創価大学文学部外国語学科ロシア語専攻卒業。同大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(英文学)。現在、創価大学文学部助教。専攻はスラヴ民俗学・文献学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kogo Eriko
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もうすでに失われてしまった民衆の慟哭の歌。葬礼の長い長い泣き歌のみならず、婚礼と兵役(25年、新兵はとくに苛酷)の泣き歌もあったのをはじめて知った。稼ぎ手を失えば貧困がぱっくりと口を開けていること、家とあの世の比喩、婚礼も兵役も大いに哀しみのうちに歌われることなどがとても興味深い。感情とその表現、また人生と命をめぐる文化史。2016/02/11
晴天
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ロシア北部において葬礼、婚礼、兵役などの別離に際して家族と共に嘆き心情を代弁した泣き歌は、遅くとも1880年代には消滅したと見られている。しかし非識字者の歌い手から採録された泣き歌の数々は、正教とも異なる土着的な死生観、農村の(多くは困難で悲哀に満ちた)暮らしと生活様式とを伝え、別離と再会への願いを謳うその表象には、まったく異なる時代と土地に生きる者としても心に迫るものを覚えた。2021/09/30