内容説明
11世紀以降の世界各地への民族離散と、現代の独立に至るまでの苦難の歴史を辿る。
目次
第1章 アルメニア人社会の拡散と民族主義の芽生え(アルメニアの東西分割;アルメニア系知識人の系譜;アルメニア民族政党の成立)
第2章 虐殺と革命、そして短い独立期(アルメニア人虐殺;ロシア革命と「第一共和国」の成立;オスマン・アルメニア人エリートの活動とパリ講和会議;「モスクワ・アンカラ枢軸」の形成と「第一共和国」の消滅)
第3章 ソヴィエト・アルメニアと在外同胞(共産党とダシュナク党との関係;国外でのダシュナク党の活動と民主自由党との関係;「モスクワ・アンカラ枢軸」のとソヴィエト・アルメニア;ナゴルノ・カラバフをめぐる共産党内の議論とダシュナク党の「自主解散」;二〇年代以降のソヴィエト・アルメニアと在外同胞との関係;ナゴルノ・カラバフ問題の再燃)
第4章 独立と試練(ナゴルノ・カラバフ問題の展開;テル=ペトロスィアン政権と在外同胞;コチャリアン政権とその後)
著者等紹介
吉村貴之[ヨシムラタカユキ]
1969年福岡県生まれ。山口県出身。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了。現在、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所非常勤研究員。専門はアルメニア近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoneyama
13
このシリーズ、版元倒産で既に図書館にしかないけど、辺境ロシアのテーマ別読み切りで楽しみ。まとめ借りした。ロシアとトルコに跨がっちゃって、第一次大戦とロシア革命前後の混み入った経緯も分かった。1915年ジェノサイドに、トルコの同盟国ドイツ軍事顧問団の関与があったんだ。第一共和国までは、エレヴァンが中心というわけでも無く、グルジアのトビリシにむしろアルメニア人は居たとか、ディアスポラの経緯とか、入門しました。アルメニア人の個人的印象:小顔で目が丸くて猫みたい。というのは村上春樹の何かで読んだ秘書の影響か。 2022/11/22
Saiid al-Halawi
10
前世紀のダシュナク党・共産党・総本山のカトリコスによって展開された政治力学の話題がやや中心。アルメニア人のアイデンティティは民族的紐帯でもアルメニア正教でもなく、虐殺体験の共有にあるんだと。2013/02/11
Quijimna
4
『コーカサスを知るための60章』のライターのひとりとしてこの著者を知った。アルメニアの歴史、文化、独特な民族感情、複雑な世界史的な位置など、むずかしいテーマを網羅しつつヒューマニズムが貫かれた文体で最後まで読ませる。かの国への並々ならぬ愛情のなせるわざか。★★★★☆2011/07/19
人民の指導者
2
アルメニアにおける民族運動、アルメニア人虐殺の歴史がよくわかる。ソ連の対土宥和策で抑えられたアルメニア・ナショナリズムがソ連崩壊時に再燃し、政治によって焚きつけられた反トルコ・アゼルバイジャン感情が、経済と平和のための交渉を阻むというお馴染みの構造。2011/06/19
我門隆星
2
こういうリーフレット自体が、もしかするとトルコ人たちの神経を逆なでにするかもしれない。アゼルバイジャン(トルコの「兄弟国」)とアルメニアの軋轢のみならず、トルコ領内の「アルメニア人」の存在・問題を浮き彫りにしているからである。2011/04/26