内容説明
「20世紀唯一の世界革命」1968年に至る60年代日本の政治的/思想的/文化的パラダイム・シフトと、その現在性を克明に描き出す渾身の長編評論。
目次
第1部 ニューレフトの誕生(「歴史の必然」からの自由がもたらされた時;文化的ヘゲモニー闘争の「勝利」とアポリア;「実存的ロマンティシズム」とニューレフトの創生 ほか)
第2部 カウンターカルチャーと理論的実践(詩的言語の革命と反革命;アンダーグラウンド演劇のアポリア;小説から映画へのエコロジー的転回 ほか)
第3部 生成変化する「マルチチュード」(世界資本主義論から第三世界論へ;戦争機械/陣地戦/コミューン;ゾンビをめぐるリンチ殺人から内ゲバという生政治へ ほか)
著者等紹介
〓秀実[スガヒデミ]
文芸評論家・近畿大学国際人文科学研究所教授。1949年新潟県生まれ。「日本読書新聞」編集長、日本ジャーナリスト専門学校専任講師などを経て、2002年より現職
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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しゅん
16
1968年の、世界各所と同時発生した日本の革命運動を、2003年の執筆当時の現在まで引き続く課題として提出するため、プロレタリア革命における「黙示録/今ここ性」の対立、人間の内部(性)から外部(公害)への「自然」概念の変化、国家革命から「差別」闘争への「局地戦化」など、いくつかの対立項を整理しながら諸要素の複雑な繋がりを提示する。哲学、経済学、各種芸術分野(小説、詩、演劇、映画、美術)での事件や論争が、68年革命とどのような相互影響関係にあったか。スターリン以後の革命×政治のフィールドを明示していく。2022/10/20
seer78
7
20世紀唯一の世界革命としての1968年。前段として、スターリン批判の意義を丁寧に説く。「歴史の必然」からの裏切り(トロツキー)の衝撃から、新左翼が誕生する。他方で、それはスターリンを「主体」として温存し、毛沢東を後継者としてとらえ返し後の文革へとつながる路をも開いた。連合赤軍や党派によるリンチ殺人他「黙示録的革命主義」の迷妄をも詳細に述べ、現在につながる1970年7月7日の「開戦」の後を辿る。津村喬への興味が湧いた。と同時に、「機動戦」「陣地戦」の異同に即して、あらゆる意味での戦争観の変化に思いを致す。2015/12/10
mstr_kk
7
これまで読んだスガさんの本の中では、圧倒的にいちばん面白かったし有益でした。スターリン批判とハンガリー事件から生まれたニューレフトが、60年安保以降その覇権を獲得しつつも、人間主義的およびナショナリズム的な誤認を積み重ね、アポリアを生じさせる。それはマイノリティー問題やエコロジー問題の浮上によって去勢される契機をもち、その契機は68年の「勝利」として今日の世界を規定しているが、またもさまざまな誤認によって、最良の可能性は悪質なものの中に回収されてしまっていると言わざるをえない。2014/11/28
けいこう
6
「『万延元年』が大江の作品のなかでも画期をなし、なおかつ、来るべき六十八年革命とのかかわりにおいて重要な小説である理由は、「言説の責任者」たることを決定的に放棄した、このいいかげんさのうちにしかない。」/「第四章 大江健三郎における保守的革命主義の帰趨」「第六章 詩的言語の革命と反革命」が特に面白かった。経済関係の話はぜんぜん読んでこなかったぶんかなり難しい。2018/02/16
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6
スターリン批判によって史的唯物論が失効したあとの、革命の可能性/不可能性について。すっごい面白い。もっと勉強してから読み返します。2017/04/27