内容説明
英雄が一介の凡夫に変転する『ヘラクレス』等、神々や偶運に翻弄される人間たちの姿が時代を越え、我々の胸を打つ。
著者等紹介
丹下和彦[タンゲカズヒコ]
関西外国語大学教授、大阪市立大学名誉教授。1942年岡山市生まれ。1970年京都大学大学院文学研究科博士課程中退。2005年京都大学博士(文学)。和歌山県立医科大学教授、大阪市立大学教授を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
4
他国との戦争や政治抗争の中での英雄の悲劇は、神の下での世界と人間の運命を物語るが、女性の悲劇では嫉妬と復讐の感情が神の意図を誤解させる(「イオン」)。トロイア戦争の英雄たちが女性を妾や奴隷にすれば(「トロイアの女たち」)、ヘラクレスは狂気の女神に取り憑かれて妻と娘を惨殺する(「ヘラクレス」)。英雄が生贄としてわが娘を指し出す手前で牡鹿とすり替える女神も成長した娘に弟の生贄の浄めも強いる。そんな英雄と神の理不尽を姉弟が人間の知によって逃れる時、悲劇は自身の危機を仄めかす(「タウロイ人の地のイピゲネイア」)。2019/07/23
nightowl
0
難業を終え帰って来た男を襲う狂気「ヘラクレス」国の敗北が決まった後も悲劇は続く「トロイアの女たち」生贄とされ亡くなった筈の姉は生きていた。彼女を連れて弟は帰れるか「タウロイ人の地のイピゲネイア」神の子が出生の秘密を知るまで「イオン」。1・2から定番の構成をやや変えつつある時期の作品。今度はそう来るか、という楽しみが味わえる。代表作でもあるトロイア~の静かな反戦劇ぶりが胸に痛い。ところで、キュクロプスはこちらではなく悲劇全集の5巻に収録されているので注意。2019/06/20
さりー
0
サテュロス劇が気になり、キュクロプスを読んでみた。あまり笑えなかった。わたしの知識不足が原因なのか、どこが笑う部分なのか、いろいろわからなくて笑えなかった。一体、どうしたらこの作品で笑えるようになるのか?と聞いてみたところ、それは、笑いのツボが違うということです。とのこと。 2019/05/22