内容説明
ローマ帝政期に成立したと見られる、ギリシア語で著わされたホメロス論3篇。古来プルタルコスの名の下に伝わり、詩人の伝記的記述を中心とする『ホメロスについて1』、彼の叙事詩の修辞的技法や教育的価値を説く『ホメロスについて2』に加え、ストア派流の寓意(アレゴリー)的解釈を駆使して詩人の擁護を図る、文法・修辞学者ヘラクレイトスの『ホメロスの寓意』を収録する。本邦初訳。
目次
プルタルコス ホメロスについて1
プルタルコス ホメロスについて2(序部;多様な表現法;事物に関する広い知識;他のジャンルの詩や絵画への影響;結部)
ヘラクレイトス ホメロスの寓意(序部;『イリアス』における寓意;『オデュッセイア』における寓意;結部)
著者等紹介
内田次信[ウチダツグノブ]
大阪大学大学院文学研究科教授。1952年愛知県生まれ。1979年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。2006年光華女子大学文学部教授等を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
文字を通して読む場合、詩神ムーサが吟遊詩人に詩的直観を与えるホメロス作品の声の時空は、語の意味と修辞から成る文字の時空に変わる。地理学、語源学、歴史等の解釈が様々ある中で、プラトンはホメロスの表現の曖昧さを批判した。この批判を経由し、ストア派的論理に習熟したプルタルコスとヘラクレイトスは、ホメロス作品の寓意的解釈を推し進める。寓意(allegoria=alle-別の/logos言葉)は、物語とは別にもう一つのメッセージを発する。悪徳と徳を同様に描くホメロス作品の読者は、徳を選ぶように促すメッセージも読む。2022/07/23