内容説明
「歴史の父」ヘロドトスの歴史眼に向けられた、あまりに過激で執拗な批判が、著者の穏健なイメージに似つかわしくないことから、真偽論争まで引き起こした『ヘロドトスの悪意について』のほか、アッティカ弁論家10人に関する貴重な伝記資料『十大弁論家列伝』、露骨なまでの新喜劇贔屓がプルタルコスの時代性を炙り出す『アリストパネスとメナンドロスの比較論概要』など4篇を収録する。
目次
借金をしてはならぬことについて
十大弁論家列伝
アリストパネスとメナンドロスの比較論概要
ヘロドトスの悪意について
著者等紹介
伊藤照夫[イトウテルオ]
京都産業大学名誉教授。1942年長野県生まれ。1974年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。京都産業大学助教授、教授を経て2012年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
5
著者はヘロドトスの『歴史』(ἱστορίαι)を劇のように捉え、その内容を事実ではなく弁論と捉え、その文字に声を聴く。こうして円形劇場で催される悲劇の合唱隊(χορός)さながらの著者は、その声に異議を唱えその真偽を質す。『歴史』の過酷で、愚行を強調するために脱線し、印象の悪い解釈を選び、功績を金銭のせいにし、悪意ある推論で評価を下げ、遠回しに誹謗しつつ褒め言葉を少し加える--これらの修辞に、著者は悲劇の合唱隊さながら論駁を続ける。支配側から書く『歴史』に対する著者の態度は、支配を笑う喜劇の賞賛へ向かう。2019/06/23