内容説明
弁論術五部分のうち、「発想」から「配列」を経て「措辞」まで。シリーズ3冊目となる本分冊には、全12巻のうち第6‐8巻を収録する。その冒頭でクインティリアヌスは、老境に入ってから得た若い妻と幼い下の息子の相次ぐ死に続いて、将来を有望視し本書を遺産代わりにと考えていた上の息子にも先立たれた直後の喪失感を吐露している。以来、執筆再開は著者自身にとっての慰めとなり、本書は全人類への遺産となった。本邦初完訳。
目次
第6巻(結びについて;感情について;笑いについて ほか)
第7巻(配列について;推測が関わる問題;定義が関わる問題 ほか)
第8巻(ラテン語らしさについて;明晰さについて;修辞 ほか)
著者等紹介
森谷宇一[モリタニウイチ]
大阪大学名誉教授。1940年京城生まれ。1971年東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東北大学助教授、大阪大学助教授、教授を経て2004年退職
戸高和弘[トダカカズヒロ]
大阪大学非常勤講師。1960年福岡県生まれ。1991年大阪大学大学院人文科学研究科博士課程修了を経て現在に至る
吉田俊一郎[ヨシダシュンイチロウ]
日本学術振興会特別研究員(首都大学東京大学院人文科学研究科)。1978年東京都生まれ。2010年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
7
本巻は勝敗を決する法廷弁論を中心とする第七巻が中心に位置する。一方、弁論術の教育educatioは法廷弁論に留まらず、現代なら学校外のコミュニケーション教育も含んでいる。本巻で興味深いのは、第六巻の笑いについての第三章だろう。ギリシアの第弁論家デモステネスはその「素質と機会」が欠けており、ローマ共和政のキケロは笑いを追求するあまり「節度」がなかったとしながら、著者は対話や文章における笑いの必要とその節度を語り、笑いを作り出す実践的方法を例示する点である。日常の弁論には勝敗でなく笑いがあると示すかのようだ。2022/08/06