内容説明
言論統制下の戦前から戦中にかけて活字メディアを埋めつくした不可解な記号群。検閲をかい潜り作品を世に出すための編集者・著者らの苦闘の痕跡ともいえる“伏字”の実態を、広汎な一次資料から明らかにする。
目次
1 伏字はなぜ施されたのか―内閲という措置(伏字の存在意義に関する基礎的考察;法外便宜的措置としての内閲;作家の検閲制度意識―永井荷風を例に)
2 伏字が引き起こす問題(森田草平『輪廻』の伏字表記―差別用語と作者の戦略;削られた作品の受容と変遷―片岡鉄兵「綾里村快挙録」を中心に;誌面削除が生んだテキスト・ヴァリアント―石川達三「生きてゐる兵隊」から)
3 検閲制度をめぐる攻防(発売頒布禁止処分と「改訂版」―昭和五年・禁止本『肉体の悪魔』と『武装せる市街』から;狂演のテーブル―戦前期・脚本検閲官論)
伏字の戦後―占領軍の検閲と文字起こし
著者等紹介
牧義之[マキヨシユキ]
1983年生まれ、愛知県出身。名古屋大学大学院文学研究科博士課程後期課程単位取得満期退学。博士(文学)。現在、日本学術振興会特別研究員PD、岐阜聖徳学園大学経済情報学部非常勤講師。日本近代文学、出版メディア史専攻。2012年、全国大学国語国文学会・研究発表奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぞだぐぁ
1
明治期の日本帝国の時代から戦後すぐGHQの支配下にあった頃までの日本における検閲の歴史についての本。 先行研究とかそもそも伏字ってどういう役割なのかって所から始まってとっつきやすく書かれている。 帝国時代は事前に役人に見てもらってこういう表現がダメって所があったり、伏字や白抜きにする方法が印刷技術史にも繋がる等思っていたより範囲が広かった。 出版社側もダメ出しがあって出せないと伏字や白塗りばかりのページにしたり広告でアピールするとかしたたか。 でも、GHQの検閲だとそもそも検閲された箇所が文脈からも(続く2023/10/13