目次
現場
赤い人質
令和元年十二月
第一波
第二波
人降りし夜
ひかりとかげと
第三波
新しい年
解放
著者等紹介
犬養楓[イヌカイカエデ]
1986年愛知県生まれ。18歳より短歌を始める。現在、救急科専門医として救命救急センターに勤務。2019年「令和万葉集」をインターネット上で発表。cakesクリエイターコンテスト2020佳作。第63回短歌研究新人賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あや
16
コロナと今まさに対峙されている医師による歌集。人命があっけなく失われていく日々、人命に選別を迫られるくらい逼迫する医療現場、救急搬送を断らざるを得ない側のお立場から詠んだ逼迫した医療現場・・この終わりの見えない闘いは今も続いているどころか、今度は変異種株が猛威をふるっている。この歌群を読んだらとてもじゃないけどGotoとか五輪決行とか口が裂けても言えなくなる。医療従事者に敬意をとお題目のように唱えるけど医療従事者の方に必要なのは一刻も早い終息のための政策とふつうの日常である。2021/05/31
遠い日
12
犬養楓氏は、救急科専門医。コロナ禍のまさに渦中で感じることを抉るように詠む。重圧、過酷な現場、命の線引き、息つく暇もない緊張の中、崩折れそうになる自分を奮い立たせ、溜息を呑み込むさまにぐさぐさ刺される。医療現場の最前線、食事も思うように取れず呼び出され、心肺蘇生の患者をよそ目に次の患者が運ばれてくる。そんな病院内の非日常的日常を歌人の目で切り取る。戦慄が走った。頭が下がる。現実は居座る。感謝を捧げるのみです。2021/09/27
Mc6ρ助
12
『この波を越えたら出そうと退職の書類が三度眠る引き出し(p117)』大阪はすでに五通目と自宅療養652人の朝2021/07/10
qoop
7
救急科専門医として、否応なくコロナ禍に突入する病院の様子を詠った本書。積もっていく焦燥と疲労の中で状況に潰されそうになる自身/病院の孤独が迫ってくる。こうした切迫感を伝える歌の連なりが畳み掛けるように目に飛び込んで来る。短歌という形式の持つ凄みを感じた。/検診で体重落ちた医療人コロナ太りに比する言葉は/ア行から感染棟に派遣され自分の姓を少し憎めり/咽頭をぐいと拭った綿棒に百万人の死の炎見ゆ/同乗のなき救急車でひたすらに息子の名前を呼んでいた人/コロナ後の世界をしっかり見ておけと喪中はがきが送られてくる2021/03/26
猿田彦
6
救急救命センター勤務医。命を知り尽くした医師が詠んだ歌には現場の大変さ、葛藤、希望、絶望とあらゆるものが詰め込まれ、日々頑張ってくださっている姿が容易に浮かび上がる。私には応援と感謝以外できることは何もないが、多くの人の目に触れてほしい一冊。/医療従事者でなくとも共感できる「口元が露わになれば恥ずかしくいつの間にやらマスクは下着」/最前線で働く人をどれどれほど傷つけているのだろうか「ただ仕事するだけの顔にモザイクがいまだに掛かることを恥ずべき」/「仕事もう行きたくないと笑いあう友がいるから玄関を出る」2021/04/26