出版社内容情報
15世紀には地理上の発見,ルネサンス運動などヨーロッパは大きな転換期を迎えるが,宗教改革(1517年)を機にカトリック世界にも大きな変化が見られた。その動きはアジア日本にも及び東西文化の激しい干渉が生じた。
「オリエント世界」に関心を持つ者は,野心的な政治家や探検家ばかりでなく,知識人,商人,修道士など幅広い人々であった。数世紀に及びアジアに関する地理情報や広範な知識が蓄積されてきたが,それらを踏まえて,著者はヨーロッパの実情,特にイタリアの宗教・思想状況を視野に入れてキリシタン時代の日本を考察し,この時代に特有の世界史的意義を呈示する。
16世紀に入りカトリック世界では,第五ラテラノ公会議(1512-17年)でルネサンスの影響下「霊魂不滅論」が信仰箇条となった。その後,宣教活動を目的にイエズス会が創立され,ルネサンス文化の粋であるヒューマニズム教育の集大成であるイエズス会学事規定(1599年)が成立,これらを背景にしてキリシタン時代には新たな宗教と思想文化が齎され,特に霊魂不滅論については激しい論争が生じた。伝統文化とヨーロッパ文化の折衝が生み出す多様な現象に光を当て,近世日本史の再考を通してもう一つのグローバルヒストリーを示唆した問題作。
序
第一章 ルネサンス史のなかの日本――近代初期の西欧とアジアの交流
一 ヨーロッパと日本のルネサンス――世界史の誕生
二 マルコ・ポーロ,トスカネッリ,コロンボと想像の日本
三 時代の思潮と理想の日本――元イエズス会士ポステルのシンクレティズム
四 イタリア半島の日本人
五 フィレンツェ人と天正遣欧使節
六 東西の相違と接近――現実の日本と近代カトリシズム
第二章 ニッコロ・デ・コンティの旅路と地図制作およびアジア再認
一 ラムージォに始まる航海・探検叢書
二 ニッコロ・デ・コンティの旅行記
三 コンティとトスカネッリ
四 コンティとポッジョの『運命転変論』
五 コンティの旅と「日本」記述
第三章 イタリア人の訪問者・熟知者と日本――鹿児島ノート
はじめに
一 種子島
二 坊津
三 鹿児島人昨今
四 ジョヴァンニ・ニコラオ・ダ・ノーラ
五 大航海時代のイタリア人
六 訪日しなかった日本通のイエズス会士
おわりに
第四章 ザビエルと時代の課題――ルネサンスの霊魂不滅論
はじめに
一 滞仏・滞伊一五年
二 ジャック・ルフェーヴル・デタープル
三 新思想の展開と日本
四 霊魂不滅論
五 ロレンソと日乗の宗論
おわりに
第五章 パドヴァ大学の伝統と霊魂不滅の問題―― 一六世紀世界における宗教と哲学思想
はじめに
一 ピエトロ・バロッツィとマルシリオ・フィチーノ
二 第五ラテラノ公会議
三 ピエトロ・ポンポナッツィとイタリアの大学
四 異端者パレアリオとイエズス会士ゴメスにおける霊魂不滅論
おわりに
第六章 ローマ・ルネサンスと世界――ヨーロッパ域を超えるヒューマニストと航海者たち
一 ルネサンス以後のローマの理解と解釈
二 ルネサンス文化と絵画資料
三 ポルトガルの海外躍進とエジディオ・ダ・ヴィテルボ
四 ジョヴァンニ・ダ・エンポリの琉球
五 ルネサンス・プラトニズムと日本
六 ルネサンス・ヒューマニズムと日本
結びにかえて――ゴイスのことなど
第七章 カトリック復興期のヒューマニスト フランチェスコ・セルドナーティ
一 人となり
二 翻訳家
三 問題のセネカと史料批判
四 著作の数々
五 時代の潮流
結語
補遺 フランチェスコ・セルドナーティ
第八章 フマニタス研究の古典精神と教育――イエズス会系学校の誕生頃まで
はじめに
一 時代的特徴
二 新たな表現方法と教育の新展開
三 ローマ精神とマッフェオ・ヴェージョ
四 イエズス会教育
五 時代の多様な教育の夢
結びにかえて――パドヴァとベーニ
結語
補論? ヨーロッパ史から見たキリシタン史――ルネサンスとの関連のもとに
一 キリシタン史誕生の背景
二 真のルネサンスの生まれる風土
三 日本のルネサンスを終わらせた鎖国体制
四 ルネサンス時代とキリシタンの世紀
補論? イタリア・ルネサンスにおけるプラトン哲学とキリスト教神学
一 フィチーノ研究略史
二 フィチーノとフランチェスコ・ダ・ディアッチェートの愛の伝統
三 公会議と霊魂不滅論
四 プレトンからフィチーノを経てステウコへ――「古代神学」から「永遠の哲学」へ
あとがき
初出一覧
文献目録
固有名索引
欧文目次
根占献一[ネジメケンイチ]
著・文・その他
内容説明
「オリエント世界」に関心を持つ者は、野心的な政治家や探検家ばかりでなく、知識人、商人、修道士など幅広い人々であった。数世紀に及びアジアに関する地理情報や広範な知識が蓄積されてきたが、それらを踏まえて、ヨーロッパの実情、特にイタリアの宗教・思想状況を視野に入れてキリシタン時代の日本を考察し、この時代に特有の世界史的意義を呈示する。
目次
第1章 ルネサンス史のなかの日本―近代初期の西欧とアジアの交流
第2章 ニッコロ・デ・コンティの旅路と地図制作およびアジア再認
第3章 イタリア人の訪問者・熟知者と日本―鹿児島ノート
第4章 ザビエルと時代の課題―ルネサンスの霊魂不滅論
第5章 パドヴァ大学の伝統と霊魂不滅の問題―一六世紀世界における宗教と哲学思想
第6章 ローマ・ルネサンスと世界―ヨーロッパ域を超えるヒューマニストと航海者たち
第7章 カトリック復興期のヒューマニスト フランチェスコ・セルドナーティ
第8章 フマニタス研究の古典精神と教育―イエズス会系学校の誕生頃まで
補論(ヨーロッパ史から見たキリシタン史―ルネサンスとの関連のもとに;イタリア・ルネサンスにおけるプラトン哲学とキリスト教神学)
著者等紹介
根占献一[ネジメケンイチ]
1949年生。学習院女子大学国際文化交流学部教授。現在同大学図書館長。博士(文学、早稲田大学)。ルネサンス思想・文化史、東西交流史。主要業績『ロレンツォ・デ・メディチ―ルネサンス期フィレンツェ社会における個人の形成』南窓社、1997年(第20回マルコ・ポーロ賞受賞作品。1999年重版)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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